外法師 鵺の夜
火事で父を亡くしたショックから、10歳の姿で成長が停まってしまった玉穂は、嵯峨野の山中で聖なる井戸の水守として暮らしつつ、優れた術の腕を持つ外法師でもあった。その彼女のもとを訪れたのは、口先ばかりで術はからっきしの陰陽師・賀茂道平。懐妊中の中宮妍子が何者に呪詛されているという道平は、玉穂に助っ人を求めるのだが。
宮廷陰陽師に非ざる術者=外法師を主人公とした平安幻想シリーズの第1巻。中身は25歳の女性ながら外見は10歳の少女、それも普段は男装という、非常に難儀なキャラクターを主人公としていますが、内容的にも文章的にも真面目な作品。派手な術合戦を期待する方には向いていませんが、人の心の歪みやきしみが生み出す怪異と悲劇の世界がしっかりと描かれていました(個人的には、あまりにきっちりとしすぎて、それが堅苦しいという印象も受けはしたのですが…)。
その一方で、玉穂を真剣に(?)口説く渡辺綱や、気持ちは玉穂以上に若い彼女の母など、シリーズキャラとしても面白そうな面々が脇を固めており、続巻も読んでみたいと思います。
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