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2004.10.31

「新選組!」 第43回「決戦、油小路」

 よく考えたらマジメにこのblogで感想を書くのは初めてかも知れませんが、楽しみに見てます「新選組!」。
 相変わらず史実がどーのと言う人もいるのかもしれませんが、伝奇バカにとっては史実と違ってナンボなのでむしろ楽しみです(山南まん激死の直後の回で近藤の妾騒動を描かれたのはさすがに萎えましたが)。

 さて今回は伊東先生と平助が死亡というまたまたつらい回だったわけですが、見る前から胸が痛む平助の死もさることながら、伊東甲子太郎の死――というよりその直前の勇との対話――が非常に印象的だったのが嬉しい驚きでした。
 伊東甲子太郎と言えば、「二股膏薬」とか「ホモじゃないだけ観柳斎よりマシな程度」とか言われてますが(ごめん後の言ったの私)、この「新選組!」での描き方は、従来とはまた異なるアプローチ。
 文武両道に秀で、高邁な理想を持ちながら、しかしそれでも時代の空気を読み切ることができず、大きな流れの前に無力さすら感じることになってしまう。そんな時に(皮肉にも暗殺策の中で)近藤と語り合い、自分の小ささを痛感してついに胸襟を開くという展開の中で見せた甲子太郎の表情とその変化は実に見事で、このドラマでの甲子太郎の無闇な才子面は今回それを崩してみせるためにあったんじゃないかとすら思わされました。

 そしてその時の近藤との対話の内容。近藤勇がやたらと理想主義なのは、ややもするといかにも大河ドラマ的な美化が鼻につきかねませんが、今回は勇の出自と、現在の甲子太郎の立場をうまく並べて見せた上で、二人が本来目指すべき理想を示して見せた点に感心しました。なんというか、男泣き度結構高くていいですね、こういうのは。
 それだけに、その直後のシーンがまたツラく…

 また、表情と言えばもちろんかつての仲間たちに刃を向ける平助の表情も素晴らしかった。もう、哀しみも憤りも全て極まって、ただ叫ぶしかないという表情が…。もう役者さんの方も、頭真っ白にして演じたろうな、というある意味素の凄みがそこにはありました。
 そして遂に斬られてなおも刀を振るう時の表情は、もう歌舞伎の見栄を切る時のノリで、これはこれでさすがは…という印象でした。
 総司の「あなた方が思うほど平助は子供じゃありません!」にもグッときましたよ。いいコンビだったもんな、二人。

 ちなみにNHK公式サイトは相変わらず素早い仕事で油小路事件コーナーを設置。平助を演じた中村勘太郎氏のインタビューを見たら、やっぱり頭のねじを一本飛ばして演じていたようです。

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2004.10.30

伝奇時代劇 映像作品公式サイトリスト

映画、アニメ、ビデオムービーなど伝奇時代劇関係の映像作品の公式サイトリスト。
追加等があったら、修正していきます。

■映画

阿修羅城の瞳
 舞台の映画化。スタッフは「陰陽師」の人たちですね
http://www.ashurajo.com/
公式ブログ

あずみ2
 脚本に川尻善昭が参加していたのには驚き
http://www.azumi2.jp/index.html
あずみ
http://www.toho.co.jp/movie-press/azumi/

猿飛佐助 闇の軍団
新・影の軍団のスタッフによる新作
http://www.cinemaparadise.co.jp/sasuke/

忍 SHINOBI
 「甲賀忍法帖」実写映画版。
http://www.shinobi-movie.com/

新・影の軍団
 地道にリリース中
http://www.shinkagenogundan.tv/

髑髏城の七人 アカドクロ(映像版)
 舞台で上演された「アカドクロ」の映像を映画館で公開
http://www.akadokuro.jp/

跋扈妖怪伝 牙吉
 漫画も連載中
http://www.kibakichi.jp/


■アニメ

お伽草子
 後半は現代を舞台にした東京編
http://www.ntv.co.jp/otogizoushi/heian/index.html

サムライガン
 OPは非常に好きでしたが…
http://avexmode.jp/animation/samurai/

サムライチャンプルー
 不遇といえば不遇の作品…復活できてよかった
http://www.samuraichamploo.com/

獣兵衛忍風帖 龍宝玉篇
 既に公式サイトは死亡の模様…
http://www.wowow.co.jp/drama_anime/jubee/contents.html

新釈 戦国英雄伝説 眞田十勇士 The Animation
 WOWOWでプロローグが放送されました
http://www.sanada10.com/index.htm

バジリスク 甲賀忍法帖
 こちらは絶賛のうちに幕を閉じた漫画版「甲賀忍法帖」のアニメ版(ややこしい)
http://www.basilisk.jp/


■その他

スタジオサムライプロジェクト
 「剣龍記」「ソードブル・ジライヤ忍法帖」など関西で活躍する時代劇メインの映像製作チーム
http://www.fides.dti.ne.jp/~ssp/


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伝奇時代劇ゲーム公式サイトリスト

半ば自分のポータル代わりに、時代伝奇劇ゲームの公式サイトリストを。追加等あったら、修正していきます。

ESP
あずみ(PS2) Amazon
http://www.esp-web.co.jp/products/azumi/index.html

 
SCE
GENJI(PS2)
http://www.playstation.jp/scej/title/genji/

 
SNKプレイモア
サムライスピリッツ総合サイト
http://www.samuraispirits-official.com/

サムライスピリッツ天下一剣客伝(アーケード)
http://www.snkplaymore.jp/official/samurai_tenka/index.html

サムライスピリッツ零/SPECIAL(アーケード,PS2) Amazon
http://www.samurai-zero.jp/

 
カプコン
新鬼武者 DAWN OF DREAMS(PS2) Amazon
http://www.capcom.co.jp/shin_onimusha/

鬼武者シリーズ(PS2)
http://www3.capcom.co.jp/onimusha/ja/index.html

鬼武者3(PS2) Amazon
http://www.capcom.co.jp/onimusha/oni3/

戦国BASARA(PS2) Amazon
http://www.capcom.co.jp/sengoku/index.html

 
元気
戦神-いくさがみ-(PS2) Amazon
http://www.genki.co.jp/games/ikusagami/

必殺裏稼業(PS2) Amazon
http://www.genki.co.jp/games/urakagyou/index.html

風雲 幕末伝(PS2) Amazon
http://www.genki.co.jp/games/bmd/index.html

風雲 新選組(PS2) Amazon
http://www.genki.co.jp/games/ssg/index.html

剣豪3(PS2) Amazon
http://www.genki.co.jp/games/kengo3/

 
光栄
戦国無双(PS2,Xbox) Amazon(PS2) Amazon(Xbox)
http://www.gamecity.ne.jp/sengoku/

戦国無双 猛将伝(PS2) Amazon
http://www.gamecity.ne.jp/sengokum/

 
スパイク
忍道 戒(PS2)
http://www.shinobido.com/

サムライウェスタン 活劇侍道(PS2) Amazon
http://www.samurai-w.jp/

侍道2(PS2) Amazon
http://www.samurai2.jp/index2.html

(PS2) Amazon
http://www.spike-online.net/samurai/top_ie.html

 
セガ
どろろ(PS2) Amazon
http://dororo.sega.jp/
http://www.red-entertainment.co.jp/dororo/index.php

新選組群狼伝(PS2) Amazon
http://gunraw.sega.jp/

 
フロム・ソフトウェア
義経英雄伝 修羅(PS2) Amazon
http://www.yoshitsune-eiyuden.net/

義経英雄伝(PS2) Amazon
http://www.yoshitsune-eiyuden.net/original_top.html

天誅シリーズ
http://www.tenchu.net/index.html

天誅 忍大全(PSP) Amazon
http://www.tenchu.net/taizen/top.html

天誅 紅(PS2) Amazon
http://www.tenchu.net/kurenai/

天誅 参 ~回帰ノ章~(Xbox) Amazon
http://www.fromsoftware.jp/main/soft/ten3_kaiki/

天誅 参(PS2) Amazon
http://www.fromsoftware.jp/top/soft/tenchu3/index.html

九怨 -kuon-(PS2) Amazon
http://www.ku-o-n.net/top/

O・TO・GI ~百鬼討伐絵巻~(Xbox) Amazon
http://www.o-to-gi.net/top/

 
ハドソン
天外魔境シリーズ(PS2,GC) Amazon
http://tengai.jp/pc/

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今週の「SAMURAI DEEPER KYO」(週刊少年マガジン第48号)

 かつてほたるが遊庵のもとで修行した道場に場を移す二人。余裕を崩さない遊庵は、この勝負で右足以外を使ったら三回まわってワンすると宣言する。先手必勝とばかり奥義五連弾を仕掛けるほたるだが、それを全て凌いだ遊庵の蹴り一発でガードの上から吹き飛ばされてしまう。自分が教えた技が自分に通じるわけがないとうそぶく遊庵に対し、ほたるは絶望するどころか楽しさすら感じると立ち上がる。そしてついに、太四老・遊庵が本当の強さを見せる――

 あー、今週はバトルばかりなのであんまり書くことがありません。しかし自分で一方的にハンデ宣言とか開幕早々の奥義連発とか、どうしてこの二人は破られるとわかっていることばかりしますか。やはり師弟で似ているってことなんでしょうか<違うと思う

 しかし最近の「先に進むため、絶対勝てない相手に必死に立ち向かう主人公たち」という展開から受ける印象、何かに似ていると思ったら、「聖闘士星矢」の黄道十二宮編のノリですね。単なる死亡遊戯パターンではなく、実力的に数段も格上の相手に食らいつくというところが。
 …無敵の俺様主人公が暴れ回っていた初期は既に想像できませんね。いや、今の展開の方が百倍くらい好きですが。

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2004.10.29

「旋風(レラ=シウ)伝」漫画化

Webコミック誌「GENZO」で「旋風伝」連載開始

 すでにお話自体は原作者のサイトで前から出ていましたが、ヒロモト森一により朝松健の「旋風(レラ=シウ)伝が漫画化。

 原作は五稜郭の戦い直後の蝦夷地を舞台に、幕軍の少年兵が必死の逃避行を繰り広げるというストーリー。文明開化の足音の前に消えゆく、蝦夷地の神々の最期の歌声をバックに展開される死闘の数々を描いた本作は、原作者の作品の中でも屈指のハードさで、読む時にはこちらも気合を入れておかないと負けてしまうくらいのパワーを持った作品でしたが、その作品を、バイオレンスでは定評のあるヒロモト森一が描くわけで、ちょっとこちらも覚悟を決めて読まにゃいかんかな、と思います(まず間違いなく、敵役の仙頭左馬之介やら神社兄弟…じゃなかった乾兄弟あたりが大暴走すると思う)。

 上記のサイトでは小さな予告カットが掲載されていますが、なかなか良い感じだと思います。原作の持つ、荒々しさの中に漂う哀しさを捉えている…というのはホメすぎかもしれませんが、猥雑な、バイオレンス溢れる世界の中にそこはかとないリリシズムを織り交ぜるヒロモト氏の作風には似合ってると思います。期待しております。

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謎のサムライ出現

謎のサムライ出現(AZOZ BLOG様)

 …サムライマン鉄砲に勝つ。

 この人、何で日本刀なんて持ってたんだろうとか、「もしかして・・!」で日本刀持ち出すなよとか、加えてナイフも持っていくところが心得あるっぽいとか、結局サムライマンも手負いになったのかとか、色々と突っ込みたいところはありますが、目の前でサンダ対ガイラみたいな異次元の対決をいきなりやらかされた被害者の人に心から同情します。っていうよりむしろうらやましい。
 あと、同情するといえば瀕死の重傷を負った犯人の人にもちょっぴり。

 しかし日本刀vs銃弾で真っ先に頭に浮かんだのがこやつだったのは我ながらどうかと思います。確かにこの人、銃弾斬りましたが。

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2004.10.28

11月の発売スケジュール

 11月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュールをアップしました。関係ないものも含まれていたりしますが。

 何やら全般的に数が少なめな気もしますが、その中でも一番の注目は25日発売の「闘・真田神妖伝」。「真田三妖伝」「真田幻妖伝」と続いてきたシリーズの三作目にして最終巻。これまで非常に良い調子に来たシリーズだけに、どのような着地を見せてくれるのか楽しみです。
 単行本の文庫化ですが、同日に発売の菊地先生の「幽剣抄 追跡者」も名作揃いの短編集。未読の方は是非。

 漫画の方では、18日に碧也ぴんく先生の「八犬伝」が何故かホーム社から刊行開始。原作に可能な限り忠実に描きながら、ラストで見事な飛翔を見せた隠れた名作で、私が大好きな作品の一つです。単行本の方はどうにも書店で見かけないので、これを期にもっと多くの方に読んでもらえたら素敵です。
 と、同じ日に発売になる鳴海先生の「乱華八犬伝 天の巻」(こちらは小説)も気になります…タイトルからしてEROそうだし。

 しかしこのスケジュールをアップしていて混乱したのが、各社のnovelsの表記。
 講談社は「講談社ノベルス」。光文社は「カッパ・ノベルス」。そして徳間は「トクマ・ノベルズ」で、祥伝社は「ノン・ノベル」。あーもう、わかりにくいっちゅうに。

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アニメ「サムライガン」 第4話「稲妻」

 なんだかやっぱり微妙に着実に暗雲の漂うアニメ版サムライガンももう第4話、今回は原作でも男泣き度高めの(おそらくは)人気エピソードのアニメ化。過去を背負った復讐鬼・稲妻と市松の束の間の交流と、男の友情をエピソードであります。

 このアニメ版で一番不安なのは絵の部分ですが、止め絵的にはかなり安定していたと思います。半裸オヤジーズの微妙な表情以外(というか前話の反動か、妙に男の半裸が目立っておりましたな)。
 しかし、その絵が動きだすとかなりガックリ。この作品でアクションシーンにメリハリがないのはやはり痛すぎます。特にクライマックス、稲妻が仇敵に迫るシーンでは、原作では過剰なまでに感情が入りまくった描写だっただけに、稲妻があんまりボロボロになっていないことも相まって、勿体ないとしかいいようがありません。

 とはいえ、一話完結話としては原作でも一番良くまとまっている部類のエピソードなだけに、アニメになっても安心して見ることが出来ました。ラストの市松と稲妻のやりとり、そして稲妻に手向けた市松の言葉は――ちょっとキメ過ぎじゃないかと思いつつも――やはりグッとくるものがあります。

 と思ったら…ラスト、市松が稲妻の黒眼鏡つけてねえ!
 バカバカバカ、あれが一番男泣きポイントなのに、あそこをスルーしてどうする! orz

 などと思わずTVの前で声を荒げつつ、次回は捨吉登場ということで、また微妙に期待しておきたいと思います。
 しかしCM明けのアイキャッチ、一号丸から順番に登場していてなかなか良いのですが、8話と10話はどうするんでしょうね。そして12話以降は…

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2004.10.27

お江戸は爽快

 腕っ節は滅法立つが正体不明、爽やかな男っぷりながらどこか人を食ったところのある主人公が活躍する、「若さま」もの(っていうんですかね?)の連作短編集。

 私の大好きな「若さま侍」をはじめとして、この手のキャラは時代劇のある意味定番ではありますが、この作品の若さまの面白いところはその性格。女子どもには優しいが、悪人や傲慢な相手には容赦はせず、悪党の上前をはねる…どころかゆすりたかりもお手のもの。一歩間違えればとんでもないヤツになってしまいますが、そこは名作「剣豪一心斎」(この作品はいずれ必ず採り上げます)の高橋三千綱先生、ギラつきかねないところをさらりと描いていています(というより一心斎先生をもう少し若くすると、この作品の主人公になりますな)。
 とはいえ、ストーリー自体はタイトルほど爽快ではない、むしろ陰惨なものも見受けられるのがいささか違和感と言えなくもありません。また、(ネタばれになりますが)ラストに若さまが旅立つ理由というのがヒーローとしてはちょっと…という印象があります。

 なお、この作品の若さまは、何故か「現代(二十世紀)に少年時代を過ごした記憶」を持つ不思議な一面もあるのですが、少なくともこの「お江戸は爽快」の時点では、それが物語中で「ちょっと珍しい」くらいのウェイトでしか描かれていないのも残念なところではあります。
 SF的な展開を…などというつもりは毛頭ありませんが、例えば半村良先生の「講談碑夜十郎」のように(あれはまあSFでしたが)、現代の記憶が、江戸時代においては規格外れな主人公の行動原理を正当化するような展開が見られれば面白かったのに、とは思います。

「お江戸は爽快」(高橋三千綱 双葉文庫) Amazon bk1


この記事に関連した本など

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2004.10.22

怪奇・怪談時代小説傑作選

 その名の通り、ホラー・怪談色の強い時代小説を集めたアンソロジー。収録作は以下の通り。

利根の渡(岡本綺堂)
魔の笛(野村胡堂)
首つり御門(都筑道夫)
刀の中の顔(宇野信夫)
鳴るが辻の怪(杉本苑子)
遺書欲しや(笹沢左保)
怪(綱淵謙錠)
掌のなかの顔(神坂次郎)
だるま猫(宮部みゆき)
影を売った武士(戸川幸夫)
日本三大怪談集(田中貢太郎)


 ご覧の通り、かなりメジャーどころも多く、読んだ作品も何作かありましたが、バラエティに富んでいてなかなか楽しめました。

 個人的にベストだったのは「魔の笛」と「だるま猫」。
 「魔の笛」は、陰惨な因縁を持つ妖笛にまつわる妖異譚ですが、終盤でこの笛の妖力に対抗するために主人公がとる行動というのが実にコロンブスの卵的かつ説得力があるもので、優れた音楽怪談であると同時に、手に汗握るモンスターホラー的側面もあって非常に楽しめました。
 「だるま猫」は、作者お得意の人情話的に淡々と物語を進めておいて、ラストでガッと一撃を喰らわせる佳品。「猿の手」的願い事の代償ネタですが、これは静かに積み重ねてきたものが一気にきて、ビジュアル的に想像ができるのがまた怖い。

 というわけで、既読の作品が多ければ格別、そうでなければ一読しても損はないスタンダードなアンソロジーだと思います。
 (しかし、怪談ファン、伝奇・怪奇時代小説キチガイを自認しておいて、上に挙げた二作品が未読だった自分てどうよと思った)

「怪奇・怪談時代小説傑作選」(縄田一男編 徳間文庫) Amazon bk1


この記事に関連した本など

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今週の「SAMURAI DEEPER KYO」(週刊少年マガジン第47号)

 かつて自分の母・伊庵が見たものを探るべく、心眼で紅の王の玉座の奥の扉の先を探らんとする遊庵。その前に現れた吹雪に対し、遊庵は、信長が望の躯を得たことも、紅の王が狂に真の躯を貸すことも、全て吹雪のシナリオ通りと言い当て、吹雪の真意を問う。吹雪は動ぜず、逆に伊庵と家族のことを口にして遊庵を激昂させる。
 一方、その母と自分たちのことを庵曽新はほたるたちに語る。かつて伊庵は太四老でありながらも謀反人として処刑され、遊庵は兄弟たちの助命のため太四老となったのだという。と、そこに現れた遊庵に対し、ほたるはアキラと辰怜を先に行かせ、単身かつての師である遊庵と対峙する。勝たなければいけない理由がもう一つ増えたと闘志を燃やすほたるに対し、遊庵は俺が太四老になったのは常に強くありたいためだとうそぶく。


 すみません、ものすごく長い間さぼっていました(他の作品も含めて)。これまでの分は後でまとめてこっちにアップするとして、しれっと今週のKYOを。

 戦闘・ギャグ少なめ、会話メインの回のためか、さりげに情報量が多めだった今回。庵一族(勝手に命名)の母は太四老だった! とプリーツのミニ袴姿の伊庵が(回想シーンで)登場。しかし(口では何と言おうと)反逆者の母を持ち、家族のために戦う遊庵を見ていると、本当にこの漫画、敵側ほとんど全員が「実は心ならずも戦う理由があるんですぅ」という状態になりそうで何とも。基本的にそういう展開は大好きなんですが、この作品ではあんまり喜べないのは何故でしょう(それは↑な状態なのがみんな美形で、ブ男は基本的に悪だから)。
 しかし上のあらすじではさらっと描きましたが、ほたるが仲間を先に行かせるシーンは、遊庵の初撃も絡んでなかなか燃える展開となっていました。まあ「ここは俺に任せて先に行け!」はバトル漫画の華、絵柄のために誤解されがちですがこの漫画、実は(特にここしばらくは)かなり古き良き少年漫画していて良いですね。

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サムライガン 集英社公式

集英社マンガネットにサムライガンコーナーが

 …何だか夢見てるような気がしてきた。素晴らしい。

 情報量自体はそんなにあるわけではないけれども、サムライガン事典はなかなか良い作りだし、ダイジェストは(読んでない人は何だかわからないんじゃないかっつう気もしますが)無闇に格好良い。ちゃんと射撃音も「バキバキ」と聞こえるし。

 月光のコーナーもあるしねえ…

 しかしこうやってみるとサムライガンってflashネタにぴったりですね。

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2004.10.20

「咲いて孫市」第3巻

 武士の身分を捨てて町火消しとなった孫市の活躍を描く作品の3巻目。設定紹介編とも言うべき1,2巻を経て、いよいよ自由に物語世界を展開させ始めた感があります。

 主人公は火消し、という基本設定さえ押さえれば、あとは様々なタイプのストーリーを展開させることができ、しかも主人公は武士と町人の境界に立つ人間、ということで、ストーリーに適度にひねりを加えることもできる、というのがこの作品の強みというべきものでしょうか。
 この3巻では、孫市のライバルである加賀のエリート大名火消しの登場――そして孫市との対立と共闘――、江戸の町を灰燼と帰さんとする姿なき凶賊ムカデとの対決といった中編エピソードの他、一話完結の単発エピソードもあって、なかなかにバラエティに富んだ構成。
 特にムカデ篇は伝奇的興趣にも富んでおり、この作品でこういう物語も展開できるのだな、と感心した次第です。

 絵的にはもはや完成された域なので、安心して読めるのも大きいですね。

「咲いて孫市」第3巻(柳川喜弘 バンチコミックス) Amazon bk1


この記事に関連した本など

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「山賊王」第6巻

 「太平記」の世界を描いた「山賊王」も順調に巻を重ね、はや6巻目。
 少年漫画誌の歴史ものとしては水準クラスの作品ですが、題材の段階でこちらを「おっ」と思わせるようなチョイスをしてきたところに、作者のセンスが光っていると言えましょう。

 とはいえ、その題材ゆえに縛られる部分もあるということでしょうか、この6巻では正直マンガらしい飛躍があまり感じられず、それが残念と言えば残念かもしれません。
 もちろん、太平記という「原作」というべき存在があるため仕方ないと言えば仕方ないのですが、読んでいるこちらが面食らうような意表を突いた展開にも期待したいものですね。

「山賊王」第6巻(沢田ひろふみ 月刊マガジンKC) Amazon bk1


この記事に関連した本など

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Y十M

せがわまさき先生の次回作発表

 すみません、毎度毎度こんなAA貼って何ですが、やっぱり貼らせてもらいます。
キ…(-_-)キ(_- )キ!(-  )キッ!(   )キタ(.  ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ━━━

 前々から噂には聞いていましたが、ついにきました。せがわまさき+「柳生忍法帖」=「Y十M]
 私の一番好きな忍法帖、いや一番好きな伝奇時代小説なだけに、期待が否応なしに高まります。予備知識なしでみたら、嬉しさで死んだかもしれん。いや本当に(他の二作に比べるといまいちマイナーで寂しい思いをしてきたんですよ、「柳生忍法帖」ファンとしては)。

 それにしても、「アッパーズ」に掲載されていたイラスト(せがわ先生のサイトに掲載されているもの)を見た時、冗談抜きで胸が高鳴りました。いや、今見ても高鳴る。何度見ても。
 たった一枚のイラストですが、ここにいるのは紛れもないあの快傑般若侠・柳生十兵衛。「魔界転生」の十兵衛でも、ましてや「柳生十兵衛死す」の十兵衛でもない、「柳生忍法帖」の十兵衛がここにいました。 泣きそう。いやマジで。

 未読の方のために内容については触れませんが、ぶっちゃけ、「柳生忍法帖」読んだら、他の作品の十兵衛は見れませんね。
 格好つけて言えば、「ヒーロー」という言葉の本当の意味が、この作品を読めばわかるでしょう。

 ただ、このタイトルはどうかと思います。言いにくいよ…

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2004.10.19

「サムライガン」第7巻

 無印「サムライガン」もようやく完結。もしかしたらお目にかかることはできなかったりするのだろうかと心配していた最終巻を手にすることができて、感無量…というのはオーバーにしても、素直に嬉しい。
 そして最終巻を読んだ感想は――実に頭の悪い感想で申し訳ないのですが、この一言。
「やっぱり面白いわ、サムライガン」

 基本的なストーリーラインは、雑誌連載時とほとんど全く変わらず、雑誌連載時の物語を裏焼きしてみせたかのような転回を見せた「サムライガン月光」の最終巻に比べれば、意外性はさほどありませんが、物語を構成する様々な要素に対する裏打ち、登場人物たちの来し方行く末について、雑誌連載時に比べてきっちりと補完されているため(雑誌連載時の描き方は、あれはあれで好きでしたが。特に最終回ラスト)、パズルのピースとピースが、きちんとはまった印象があります。
 とはいえ、そうして組みあがったパズルに描かれているのは、更なるパズル…というべき世界。アクション描写の冴えもさることながら、私がこの作品に一番魅力を感じるのは、謎と嘘が幾重にも絡み合った物語世界の造形でありまして、そういう意味ではやはり面白い作品だとつくづく感じます。

 「サムライガン」という作品に対する全体的な感想は、こちらに以前書いた通りなのですが、改めて無印、月光と読み通してみると、作品の根底にあるのは実は極めて単純で、そして重たいこと、つまり「生きるということ」なのかなあ、と感じもしました。

 最後にラストシーン。ひたすら重たい展開が続いた後にあのやりとりが入ったのは、(初期の市松の姿を見たようで)少し救われた気分になった…かな。

 そして「ロッテルダム・バーニング」に続く!

「サムライガン」第7巻(熊谷カズヒロ ヤングジャンプ・コミックス) Amazon bk1


この記事に関連した本など

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サムチャイ2nd

「サムライチャンプルー」セカンド・シーズン決定

 …いや、こればっかりは予想できなかった。全26話の予定が(地上波では)17話で打ち切られたサムライチャンプルーにセカンド・シーズンとは。
 とりあえず、さすがにもうフジテレビではないでしょうなあ(そもそも地上波かどうかも怪しいですが)

 というより、残り9話を放送ってオチだったらどうしよう。

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2004.10.18

イナジュン登場

「幽」第2号に稲川淳二登場

 この夏は(秋も)実話怪談が豊作で、いずれ紹介しようしようと思いつつ、するヒマがなかったのが残念なほどだったのですが、実話怪談シーンでやはり特筆すべき出来事と言えば、怪談専門誌「幽」の発刊。
 特集記事も適度にマニアックで面白かったし、よくもまあこんな豪華メンバーを、と思うような面子による実話怪談記事も(人によって出来不出来はありましたが)楽しかったのですが、しかし個人的に不満が残ったのは、「日本初の怪談専門誌」を謳いつつも、肝心の「怪談」とは何か、という点がいまいち不明確に感じられた点でした。
 これ怪談じゃないだろ、というような作品がブックレビューで採り上げられている一方で、当然採り上げられるべき人が無視されていませんか、文芸方面に偏っていませんか、というのが正直な感想でありました(まあ、一怪談オタのタワゴトではありますがネ)。

 と思っていたところに上のニュース。(毀誉褒貶はあれども)日本の怪談シーンでやっぱりこの人を外すわけにはいかんでしょう、というべき人、怪談と言えば当然採り上げられるべき人が登場する、しかも加門七海氏との対談ということで、これは非常に楽しみな企画なわけでして、また、上に書きました胸のつかえが一つ取れた気分であります。

 …というか、新耳作者の記事も当然掲載されるであろう雑誌にイナジュンを登場させた、編集長のブレイブハートに驚いたり。

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時代コミック3連発

 最近買った時代(伝奇)コミック3作をまとめて紹介。我ながらどうよ?というラインナップですが、まあうちのサイトらしくていいかな。

「BEHIND MASTER」第2~4巻

 以前に第1巻の感想だけ書きましたが、続きを読みました。正直、最初のエピソードはそれほど面白いと思わなかったのですが、佐助の過去のエピソードが登場するあたりから面白くなってきました。可愛い絵柄ながら展開が暗黒というあたり、さすがガンガン系は油断できません。
 佐助と清海の宿敵となるであろう怪忍群も現れ、忍者ものとしてのストーリーの盛り上がりもなかなか。佐助や清海はもちろん、服部半蔵や霧隠才蔵、果心居士といった時代ものではお馴染みの面々も(キャラ的にもデザイン的にも)ひねった造形となっており、意外性があって良いですね。

「BEHIND MASTER」第2~4巻(坂本あきら ガンガンWINGコミックス) Amazon bk1


「新・子連れ狼」第1~2巻

 言うまでもない大名作の続編。どうやって話をつなげるかと思ったら、前作のラストシーンからそのまま始まったのには驚きました。しかしちゃんはどうするんだろうと思いきや、新たに大五郎を連れて旅するのが示現流開祖・東郷重位というのが嬉しい驚き。なるほど、重位くらいの大物であれば、「子連れ狼」の新たな顔として活躍することも可能でしょう(史実からすれば年齢的にはアレですが、それは前向きに忘れましょう)。
 とはいえ、ストーリー的には、現時点では「刺客襲撃→撃退→絆を深める大五郎と重位」というパターンに感じられて、前作のイメージで読むとかなり違和感があるところ。今のエピソードはあくまでも序章なのか、それともこの展開で最後まで行くのかはわかりませんが、物語構成的には別物と思った方がいいようです。
 正直、森秀樹氏の絵はあまり得意でないこともあり、重位の電波オヤジぶりがこの作品の一番の見所かも…

「新・子連れ狼」第1~2巻(森秀樹&小池一夫 ) Amazon bk1


「隠密剣士」第2巻

 「甲賀五忍衆の章」の2巻目。雑誌連載を楽しみに毎月読んでいるので、改めて読んでみて大きな驚きというものはないですが、やはり今日日珍しいくらいにシンプルなストーリーを、真っ正面からアクション大活劇として描いている点が素晴らしい。キャラクターの絵的にはまだ成長の余地もあるかと思いますが、アクション描写は相変わらず達者の一言。2巻ラストに収められた秋草新太郎と甲賀竜四郎の頂上決戦など、今さらマトリックスかい! と思いつつもチャンバラアクションとして大いに楽しめました。
 一つだけ文句をつけるとすれば、「甲賀五忍衆の章」が最終話まで収録されていないこと。確かあと1話で完結だったはずなので、正直すっきりと2巻で収めて欲しかった気はします(最終話がまた完成度が高かっただけに)。

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2004.10.13

甲賀忍法帖・改め

映画版甲賀忍法帖の主役は仲間由紀恵&オダジョー

 というわけで、前々から話だけ出ていました映画版甲賀忍法帖が、「忍 SHINOBI」というタイトルで発表されました。しかし「SHINOBI」って…ジョー・ムサシ?(そういえばあいつの流派は朧流だった)

 正直、私はオダジョーに含むところありまくりなので、
「俺、忍者とか大嫌いなんですよ。瞳術使うとか、十対十で戦うとかって言うの、はっきり言って気持ち悪い」
とか陰で言ってんじゃないの? とかネタ混じりで思ったりもしますが、まあ弦之介が無精髭生やしてたりしなければどうでもいいや。

 また、大きくとりあげられているのが個人向けに「映画ファンド」を公募するということですが、一口10万円からというのは、うーん少々厳しいかなあ。3万からとかだったらやったかもしれません。

 衣装デザインは山田章博先生らしいので、その辺りも期待したいところです。

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2004.10.12

髑髏城の七人 アオドクロ

 既にちょっと触れましたが、土曜日に日生劇場で「髑髏城の七人 アオドクロ」を観てきました(しかしブログで過去のことを今更書くのってどうよ、という気もしますな。日付だけ遡って設定すればいいのかなあ)。
 「髑髏城~」については97年版のDVDも手に入れたので比べてみてようやくわかったのですが、春に上演された「アカドクロ」の方がむしろ特殊なケースだったんですね。このアオの方が、97年版の方を引き継いだ正常進化というべき作品となっていました。
 アカの方が(今観てみれば)ひたすらシンプルに、必要最小限の要素で物語を組み上げていったのに対して、アオの方は歌あり踊りあり、バカ度も相当にアップして、物語に豪華絢爛なデコレーションを積み上げていった作品という印象。プログラムでいのうえひでのり氏が、アカは麺とスープで勝負したラーメンだとすれば、アオは具材をたっぷり乗せたこってり風味のラーメンと表現していましたが、全くその通りだと感じました。時代劇という目で見ればアカの方がよりそれらしいのでしょうが、私は新感線の劇中歌が大好きなこともあり、アオの方ももちろん非常に楽しめました。

 このアオでは、これまで初演以来古田新太が演じてきた主人公・捨之介を市川染五郎が演じるということで、非常に楽しみにしていたのですが、これがまた予想通り期待通り、イキでスマート、実に痛快なキャラクターとなっていました。所作の決まり様とカツゼツの良さは言うまでもなく、普段は脳天気な二枚目半でありながら、決めるときは決める男の中の男を好演していました。
 …が、贅沢を言えば、あまりに格好良すぎて、古田捨之介にあった必死さの中にある男の格好良さ、過去を背負った人間の重みという点では少し物足りなかったかな、という印象があります。
 一方、二役の天魔王の方。これが実に素晴らしかったと思います。元々、アカに比べれば一幕二幕両方の冒頭に出番が増えており、そういう意味では脚本や演出に依るところもあるのでしょうが、とにかく劇中で描かれる天魔王の姿は、強く恐ろしく、そして美しいという、ある意味敵役の理想型。後半の無界の里襲撃時の残虐ファイトもあって、「どうやってこんな奴に勝つんだよ」感が頭抜けておりました。また、二幕冒頭の、敦盛を舞いながら忍びたちを殺戮していくシーンは、染五郎ならでは、と言ってよいのではないでしょうか。

 その他のキャストでは、忠馬と蘭兵衛は、個人的にはやはりアカの方が良かったかなあというのが正直なところ。忠馬は、これまでの版で忠馬に当たるキャラだった兵庫が「豪快」とすれば、むしろ「やんちゃ」というべきキャラだったのがちょっと違和感がありました。
 また、蘭兵衛については、うーん、普通に演じていたなあという印象。元々色々と立ち位置的に難しいキャラクターだと思いますが、もう一ひねり、蘭兵衛のもつ歪みというものを表現して欲しかったように思います(こう考えると、登場時点から歪みが生じていたアカの蘭兵衛は、うまく考えられたキャラクターだと思えます)。もっとも、この辺りはまだまだ上演が始まったばかりということもあり、これからどんどん練られていくに違いない、と思います。
 そのほか、鈴木杏は「男勝りで無鉄砲な元気少女」という、ある意味時代劇定番キャラクターをばっちりと好演、高田聖子サマも相変わらず女っぷりがステキでした。

 と、知ったかぶりしてグダグダと書きましたが、やっぱり面白い作品、伝奇時代劇ファンにとってはたまらない作品でありました(各版で微妙に筋やキャラが違うという、バージョン違い萌えにとってはたまらない点もありますし)。今年最強を謳われる台風にもめげず、嵐の直撃を食らって下半身ビシャビシャになってまで行った甲斐は十分にあったと思います。カーテンコールで染五郎が列車の運休情報を読み上げるという、超レアもののボーナスもありましたしね。

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2004.10.11

六番目の小夜子

 昔っから、何で俺はこの本を今まで読んでいなかったんだろう、ああ「面白い本好き」失格だあ! と思うことがしばしばあるのですが、今回もまた思ってしまいました。恥ずかしながら手を触れたこともなかったこの本を急に読んだのは、つい先日まで寝食忘れてはまっていた某ジュヴナイル伝奇ゲームの中でこの作品のタイトルが使われていたからだったのですが、いやはや、60~70年代のジュヴナイルSFが大好物な私にとっては、本当に素敵な時間を味あわせてくれる一冊でした。

 内容についてはあえてつっこんで触れませんが、かつて確かに存在し、それを通り過ぎてきたにもかかわらず、もはやこれから先、自分自身がそれに触れることは決して叶わない時間、そんな時間の一片を切り取って見せてくれた、爽やかで暖かい、そして非常に切ない物語。
 もちろん描かれる世界は物語の中だけの架空の世界ではありますが、しかし、高校生以上の読者であれば、誰もが自分の高校時代と重ね合わせて、キャラクターたちの存在や、描かれる風景を現実のそれとして感じるのではないでしょうか。それだけ、物語を構成する全ての要素が――それが非現実的な・超自然的なものであれ――独特のリアリティを持って描かれていました。
 物語のヒロインであり、物語の謎の中核である《転校生》津村沙世子でさえも、時に謎めいた、妖しげな顔を見せつつも、同時にごく普通の明るく元気な高校生の素顔を持つ少女として描かれており、この辺りの描き方は実にうまいと感心しました。

 内容を無理にジャンル分けすれば、ホラーかミステリーになるのでしょうが、そんな区分けはもう無粋と言うべきでしょう(特に後者と捉えると、Amazonの書評のように「オチがどうこう」と哀しいことを言う人が出てくるので…)。あの屈指の名シーン、恐怖の文化祭の一幕は、そこらのホラー小説など一蹴せんばかりの迫力でありましたが。
 強いて言えば、「少年ドラマシリーズ」というジャンルになるんじゃないかと思われるこの作品、この単語を聞いてピクッと反応するような人には是非ともお勧めしたい作品です。

 …ぶっちゃけ、私は思いっきり心の中のノスタルジー回路を刺激されて、かなり切ない気持ちになって転がり回りましたので、三十過ぎの人は気を付けて読んだ方が良いかもしれませんが――

 ちなみにこの作品、数年前にNHKでドラマ化され、今でもネット上に熱心な研究・ファンサイトがあるほどの人気を博したようで、それも非常に見てみたいなあ…と思いつつ、沙世子役が栗山千明ってのを知ってあまりのハマリ様に吹きそうになりますた。

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2004.10.10

又右衛門とアオドクロ

 今日(いやもう昨日ですが)は首都圏に台風が直撃した日。外出は控えるように
 よりによってそんな日に、昼は国立劇場で「伊賀越道中双六」、夜は日生劇場で「髑髏城の七人 アオドクロ」のチケットを取っていたという罠。

 それでも行きましたよ! 日生劇場への移動途中で豪快な嵐にあって下半身びしょ濡れになったりして(昨日は風邪で寝込んでたってのに)泣きたくもなりましたが、どちらの舞台もきっちりと見て楽しんできました。時代劇の神様、やりましたよ!<なにを

 感想はいずれきちんと書こうと思いますが、「伊賀越~」は偽装結婚とは言え七歳の幼女(しかも自分の前妻の妹)と婚礼を挙げるのはどうよ、とか「アオドクロ」はカーテンコールで染五郎が列車の運休情報を読み上げてくれてすごいボーナストラックだったとか、何だか不真面目な感想ばかりですが。

 あと、日比谷で雨宿りに飛び込んだビルがやたらとレトロで味のある建物で、思わずタイムスリップしたんじゃないかと心配になったのもいい想い出です(このビルでした)。
 帰りは行きが嘘のように雨が上がっていい気分で帰れました。

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2004.10.05

アニメ「サムライガン」第1話

 え~ついに始まりましたアニメ版サムライガン。個人的にはもっととんでもなくひどい代物になることを覚悟していたので、それに比べれば遙かにマシな第1話だったと思います。市松の声が軽すぎるように思いましたが、原作後半の印象が強いからかな。

 ただ、やはりアクションのキレの悪さはどうにも気になるところ。何というか、こう、原作の持っていたシャープさというかキレ、ケレン味がないというか…動かなければ動かないなりに、もっと止め絵でも幾らでも見せようがあると思うのですが、その辺がどうにもぬるくていけません。
 それ以上に気になったのが今回のエピソードの結末部分。原作では、砂を噛むような思いを味わっているかのような市松の姿が印象的だったのに、何だかただのちょっといい話になっとるなあ…と。
 また、やっぱりOPは「1800年代 いずれ幕末と呼ばれる事になるのかもしれない日本」から始まって欲しかった――と、いかん言い出したら止まらなくなってきた。

 OPとEDはそれなりに雰囲気が出ていたので、荒削りでいいから突っ走って欲しいと思います。

 しかし2chとか見てるとやたらグロいグロい言われてますが、そんなにかねえ? 

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2004.10.04

「髑髏城の七人 アカドクロ」映像版

 ブログで過ぎたことを書くのも気が引けますが、先週「髑髏城の七人 アカドクロ」映像版を見てきました。
 要するに映像ソフトを映画館で流していたのですが、これが期待以上に楽しめるものでありました。

 元々舞台として構成されているものをカメラで撮ればそれですぐに一つの作品となるか、といえばそれはNoだと思うのですが、しかしこの映像版では、かなりの部分で一つの別個の作品として存在できるクオリティとなっていたと感じます。

 舞台というのは(大して見てもないくせに言えば)観客の視線によっていかようにも印象が変わりますし、ある程度誘導はできるにせよ、そこには映画やTVドラマ等よりも観客の見方というものをコントロールする(≒演じる側の意図するものに集中させる)のは難しい部分もあるのではないかと思うのですが、映像として編集することによって、よりシャープな作品として提示できる面があるのだな、と感じた次第。

 個人的には、舞台で見た時にはあまり心に響いてこなかった蘭兵衛のキャラクター・芝居が、間近から撮った映像によって、よりしっかり伝わってくるように思いました(いや、舞台としてそれはどうなのよ、という気もしますが)。
 ミーハー的な視点で言えば、さすがに本作のアクション監督だけあって、服部半蔵のアクションは図抜けていたなとか、極楽太夫マジで美人だわとか、よく見たら狭霧のコスってムチムチしてEROいよとか、色々あるのですが、一度観て筋などは知っているにも関わらず、3時間近い上演時間中、一度も飽きることはありませんでした。
 一緒に行った友達や、勧めまくって別の日に行った友達も大絶賛で、いや、良かった良かった。

 そして今週からは舞台の方で、市川染五郎主演のアオドクロ。週末に観劇予定なので今から楽しみで仕方がありません。
 今度はちゃんとサントラをゲットしてこよう。

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