妖異七奇談
その名の通り、七編の時代ホラー、時代SFを収録したアンソロジー。
収録作と作者は以下の通り。
「黒川主」 夢枕獏
「飛鏡の蠱」 朝松健
「あやかし」 山田正紀
「小袖の手」 宮部みゆき
「両口の下女」 東郷隆
「幕末屍軍団」 菊地秀行
「清太郎出初式」梶尾真治
ご覧の通り、なかなかのラインナップ。「あやかし」「幕末屍軍団」など、名作なのに今では微妙に読みにくい(手に入れにくい)作品も収録されているのがポイントが高いところです。
と、お一人だけ非常に意外というか、作品の存在を知らなかったのが梶尾真治先生の「清太郎出初式」(「地球はプレイン・ヨーグルト」すら読んでいなかったのがモロバレで非常にお恥ずかしい)。
かのウェルズの「宇宙戦争」の火星人が日本は九州にも来襲していたという設定の人情話(!)。ベタではありますが、いかにも70年代日本SFらしい手触りの作品でありました。
と、このアンソロジー、非常に堅いと言えば堅いチョイスではありますが、これまで時代ホラーにあまり触れてこなかった純粋時代小説ファンの方、あるいはこれまで純粋時代小説にあまり触れてこなかったホラーファンが、新しい世界に触れる、その入り口としては非常に適した一冊だと思います。
ただ一点、無粋を承知の指摘。巻末の解説で「幕末屍軍団」が遂に書き継がれることはなかった旨書かれていますが、まさに今、「メフィスト」誌で長編版が連載されているわけで、ちょっとこの点だけ気になったところです。
「妖異七奇談」(細谷正充編 双葉文庫) Amazon bk1
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