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2005.03.31

貧乏同心御用帳

 貧乏暮らしながら九人の孤児を養う、奉行所きっての敏腕同心・大和川喜八郎の活躍を描いた連作短編集。「南蛮船」「埋蔵金十万両」「お家騒動」「流人島」の全四編からなっています。

 柴錬作品に触れるときにいつもながら感心するのは、どの作品を読んでもハズレがない、一定のレベルを満たしているということ。この作品も、そんな柴錬作品の名に恥じない快作でありました。

 喜八郎は、町方同心という柴錬作品にしては一見無頼度の少ない主人公ですが、ピシッと一本筋が通った生き方(そしてそれこそが柴錬先生のいう「無頼」というダンディズムだと思うのですが)を備えた男。
 そんな彼が挑む事件は、どれも皆、武家の醜いエゴが絡んだもの。庶民に比べれば遙かに恵まれた暮らしをしているはずの武家のそんな有様は、貧しいながらも凛とした姿勢の暮らしを崩さない喜八郎と九人の子供たちと好対照を為し、柴錬先生ならではの「人として望ましい生き方」が、エンターテイメントの姿を取りつつもここでは描かれているように感じ取れたことです。

 まあ、非常に特徴ある設定である九人の孤児たちが積極的に活躍するのが、前半二作だけというのはかなり勿体ないな…という感はなきにしもあらずですが、肩の凝らないエンターテイメントとして見れば、申し分ない作品だと思います。

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「貧乏同心御用帳」(柴田錬三郎 講談社文庫) Amazon bk1

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西行桜

 天才能楽師にして呪禁道を継承する世阿弥が数々の怪異と対決する「西行桜」「葛城」「鉄輪」、仕込み琵琶を操る平安京一の狩籠師(退魔師)闇源氏の活躍を描いた「無傷」「寝物語」「腹子石」、数々の霊異譚を持つ元三大師良源が震旦の妖女と対決する「降魔大師」の七編を収録した短編集。

 最近はすっかり真面目な大作ばかりになってしまった作者が、バリバリと伝奇アクションものを書いていた時期の作品が収められています。
 身も蓋もない言い方をしてしまえば、長大なシリーズになり損ねたシリーズの集まりなのですが、さすがは火坂先生、どの作品も皆きちんと楽しめるものとなっていました。

 特にどの作品も、主人公の設定に趣向が凝らされていているのが面白いところ。例えば、世阿弥が伝奇時代ものに顔を出すのは珍しいことではありませんが、この作品集では、能楽の源流としての呪禁道を会得した退魔師としての側面を与えられており、視点のユニークさがうかがえます。

 ものすごい名作! というわけではないですが、伝奇好きが読む分にはどれも楽しく読める作品集ではないかと思う次第です。

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「西行桜」(火坂雅志 小学館文庫) Amazon bk1


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「オペレッタ狸御殿」の脚本は

 気づくのが遅いよ! と怒られそうですが、私は「SHINOBI」よりも楽しみにしているところのオダギリジョー主演映画「オペレッタ狸御殿」の脚本が、不思議コメディーシリーズで豪腕をふるったナンセンスの鬼・浦沢義雄氏とのこと。
 前評判によればかなりの怪作のようですが、あの監督・スタッフにこの脚本では、それもむべなるかな。とりあえず、無生物が歌い出すのは確定かと。

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2005.03.26

2005年秋の劇団☆新感線公演は…

 今日(もう昨日ですが)「髑髏城の七人~アオドクロ」を観てきました。
 これはこれで非常に楽しかったのですが(感想は後で書きます)、驚いたのがもらったチラシの中にあった劇団☆新感線秋公演の演目。
 もちろん伝奇時代劇ですよ?
 なんと原作ものですよ?
 時代劇ファンには有名な作品ですよ?
 その作品の名は…

 「吉原御免状」

 いや、驚きました。
 隆慶一郎先生の、あの「吉原御免状」が新感線で舞台になるたあ読めなかった。
 しかし、考えてみれば隆作品の「道々の輩」と、中島かずきお得意の「まつろわぬ者」はイメージ的に重なる部分も多いし、新感線があの(個人的には伝奇時代小説としてはなかなかお行儀の良い作品というイメージのある)作品をどう料理してくれるのか、楽しみです。

キャストの方は、
堤真一
松雪泰子
古田新太
京野ことみ
梶原 善
橋本じゅん
高田聖子
粟根まこと
藤村俊二

と、ある意味鉄壁の布陣。
 客演の方々も豪華ですが(堤真一は、市川染五郎と同じく準レギュラーって気もしますが)、古田・橋本・高田・粟根とガッツリ揃っているのも嬉しいところ。
 まだ配役は不明ですが、「堤真一=松永誠一郎」は間違いないとして、たぶん「古田新太=柳生義仙」「オヒョイさん=幻斎」なんでしょうなあ。こういう予想をするのもまた楽しい。

 と、ずいぶんと浮かれている私ですが、この公演情報が新感線のオフィシャルサイトに掲載されたのは3月8日。
 …遅い、気付くの遅すぎるよ私! ああ、恥ずかしいorz

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2005.03.25

「Y十M」連載開始号決定

http://ad.kodansha.net/topics/20050323/

 すでにせがわまさき先生のサイトでは告知されていましたが、「ヤングマガジン」誌4月18日発売号より、「柳生忍法帖」を原作とした「Y十M」の連載を開始、とのこと。

 長かった…第一報から今まで、本当に長かった…
 あまりに待たされたので、「やっぱりあれは幻覚とか妄想とかの類だったのか」「何かマズイ事情とかあって企画取りやめになったのでは」などといらぬことを考えていましたが、一安心。
 アニメ版「バジリスク」の放送開始とタイミングを合わせてきたということですかね。

 …しかし、「人気ユニット」という表現はいかがなものか(上のリンクの記事中)。何だか非常に愉快なビジュアルが浮かんできました。
 そして十なのか+なのか(上のリンクの記事だと+なんですなあ)。

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2005.03.21

「必殺仕置長屋」第1巻

 江戸の賞金稼ぎが巣くう悪所、人呼んで仕置長屋。表向きはあってはならぬその長屋の賞金稼ぎたち――仕掛け蝶々の市太郎、絞り屋の岩鉄、知恵の輪のお京――、そして長屋の番所詰めの昼行灯こと鈴木主膳は、法で裁けぬ悪党どもを闇で裁いて仕置きする仕置人という裏の顔を持っていた。仕置は今夜!!

 長らく必殺ファンの間では幻の作品となっていたものの、昨年めでたく「コミック時代活劇」誌で復活した作品が単行本(といってもコンビニ売りのアレですが…)化。
 漫画というメディアでありながら必殺シリーズ第31作目と称されるオフィシャル作品、そして何よりも原作が必殺界でその名を知られる山田誠二氏だけあって、必殺もののフォーマットは押さえつつも、後期必殺で見られたのルーチンワークに留まることなく、この作品ならではの――そして「必殺」に留まらず70年代TV時代劇的な――味わい・深みが感じられます。特に、一つの仕置が新たな惨劇の幕開けとなる第5話「惚れて貫く仕置の掟」は名作(後味は悪いですが)。
 キャラクター的には、やはり仕置人たちの元締め、昼行灯の鈴木主膳が非常に面白い存在。長屋の番所詰めという奉行所に席のないどん尻のお役目で、家に帰ればお家の過去の栄光を思う母に泣かれるという冴えない人物ながら、実は剣の達人でダーティプレイもお手の物(強敵を仕留めるために、相手の赤ん坊を懐に入れて対峙するという最高ぶり)という男。しかも「三年前から行方知れずの中村主水」が親戚というとんでもないおまけつきであります。

 が…上に挙げたこの作品の長所が、そのまま裏返すと短所になっているのも正直なところ。
 キャラで言えば、鈴木主膳の個性に他のキャラが完全に喰われているのが現状。特に、仕置人たちは表の顔の一つとして賞金稼ぎをなりわいとしているのですが、これが仕置人とあんまり区別がつかず(もちろん作中で完全に別物と説明されているのですが、やっぱりすっきりしない)、「表であんなことをしている人が裏に回れば実は…」という必殺ものの魅力の一つが大いに減じられているのが残念に感じられます。
 ストーリーの方も、設定・展開に盛り込みすぎ、ひねりすぎのきらいがあり、却って仕置のカタルシスが減じられているのも痛い。

 「必殺シリーズという看板」「この作品(作者)ならではの独自性」「マニア以外も読む時代劇劇画」という、相反する(こともある)要素を同時に成立させることの難しさというものを感じた次第であります。

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「必殺仕置長屋 1 命が的の裏稼業編」(木村和夫&山田誠二 SHUEISHA JUMP REMIX) Amazon

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2005.03.19

「戦国BASARA」公式サイトオープン

http://www.capcom.co.jp/sengoku/index.html

 カプコンの新作ゲーム、「戦国BASARA」の公式サイトがオープン。
 タイトルだけ見て(メーカー見ないで)、シューティングゲームかと思いましたが、「戦国無双」タイプの一対多のアクションゲームのようです。ものすごーく身も蓋もない言い方ですが。
 メインスタッフが「デビル・メイ・クライ」の方々なのがウリの一つのようで、ジャンルはスタイリッシュ英雄(HERO)アクション。ごめんなさい、ちょっと笑った。

 画面写真などを見ている限りでは、何というかかなりGENNKAITOPPAなイメージで、もうこうなったら徹底的に突っ走って欲しいですね(他に言いようない)

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2005.03.18

4月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュール

 4月の伝奇時代劇関連アイテム発売スケジュール(のうち、書籍とゲーム関係)をアップしました。右側の「発売予定リスト」からも見ることができます。
 …が、どうにも4月は正直あまりパッとしないイメージ。個々の作品を見ると、それほど悪いわけではもちろんないのですが…個人的には長谷川卓先生の「血路」文庫化と、沢田黒蔵先生が久々に学研M文庫で書くのが楽しみです(が、学研M文庫の新刊予告は今ひとつ信用できないのでまあ出たらもうけ、という気分で)。
 も一つ、元PCエンジンユーザーとしては「天外魔境III」がついに発売されるのが非常に感慨深いことです。

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2005.03.17

荒木又右衛門

 天下三大仇討ちの一つ、ご存じ荒木又右衛門の鍵屋の辻の仇討ち譚です。
 内容的には又右衛門の生い立ちから始まって、修業時代のエピソードや柳生宗冬への奥義伝授(奉書試合)といった前フリを経て、本題の仇討ちに入っていくという、豪傑ものの講談では定番のパターン。史実では又右衛門は、男色のもつれ(横恋慕)から殺害された義弟の仇討ちでしたが、さすがに講談のネタ的にはアレなのか、小人の逆恨みで殺された義父の仇討ちとアレンジされておりました。
 史実の方は、ある意味江戸時代の武士道のネガティブサイドがもっとも色濃く出た事件として、個人的に非常に面白く思っていたので、このアレンジはいささか残念ではありますが、講談に史実との関係を言うのも野暮な話ではありますね。

 しかし何よりも驚かされたのは、陰険一歩手前の又右衛門の策士ぶり。宗冬に接近するための手練手管から、義弟数馬の心底を試すための一芝居、そして仇の河合又五郎一党を追って繰り広げる神経戦・情報戦の数々には、又右衛門に対して持っていた豪傑としてのイメージを覆されました。
 ことに又五郎一党との神経戦・情報戦は、講談なりの単純さで描かれてはいますが、なかなかに新鮮なイメージでありました。
 もっとも、同じ主君に仕えていたいわば同僚でありながら、又五郎側についた桜井兄弟への又右衛門の「神経戦」の数々(主君の前で暴言をはいて挑発した上で御前試合で叩きのめす、旅に出た兄弟を追って執拗にたかり続ける等々)は、桜井兄弟が明らかに又右衛門より格下に描かれているだけに、陰湿極まりない虐めにしか見えず、ああ、又右衛門さんもやっぱり柳生流なんだなあとわけのわからない感心をしてしまったことです。

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「荒木又右衛門」(講談名作文庫)


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2005.03.16

「武蔵伝 異説剣豪伝奇」第1回

 以前書いたとおり、「コミック乱ツインズ」誌で石川賢待望の新連載「武蔵伝 異説剣豪伝奇」がスタートしました。

 第1回はまだまだつかみの部分、物語の基本設定として、武蔵を名乗る者が複数いること、そしてその武蔵を江戸に呼び集め、戦わせようとする企みがあることが語られたほかは、キャラクター紹介編という趣で、少々おとなしめではあったのですが、さすがは石川賢、どの武蔵も無精髭のこ汚らしい壮漢という共通点はありながらも、それぞれの描き分けが――つまりキャラ立てが――なかなかうまい。
 特に宮本武蔵玄信と宮本武蔵義経(なんという名前じゃ)は、同じようなシチュエーションに置かれながら、それぞれの(文字通り)「腕」の違いを見せているのが面白く読めました。

 第1回だけ読むと、今後の展開は「ドキッ! 武蔵だらけの剣術大会 (生首が)ポロリもあるよ!」ということになるように思えますが、まあ序盤の展開が途中で根こそぎひっくり返されるのがケン・イシカワイズム。半年後くらいには、幕末の京都で武蔵が超近代兵器で武装した新選組と戦っていても驚きませんよ。


 ちなみに「コミック乱ツインズ」誌では、次号から森田信吾の新連載(主人公は伊庭八郎!)がスタート。
 平田弘史と石川賢と森田信吾の作品が一度に読めるという、一部のファンにはたまらない雑誌になりそうです。

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2005.03.15

ここしばらく

 父がインフルエンザをこじらせて入院してあわやということになったり、この半年近くほとんど一人でやってた仕事がようやく形になったり、父が良くなってきたら母がノロウィルスで倒れたり、ちょっと遠くに異動するかもな話がでたり、風邪引いて歯が痛くなったり、鼠に部屋のポトスを囓られたりと公私に渡って忙しい半月でした。微妙にネガティブなイベントが多いのは「「弩」怖い話2」のせいだったらどうしよう。
 しかし、あんまり間をおいたら文章の書き方を忘れたような気もします。弱った。

 これだけではなんなので、ちょっと面白いサイトを。
 「忍道「戒」」というゲームの公式サイト(といってもまだまだ準備中ですが)に、「奈美の質問コーナー」というコーナーがあります。
 いわゆる人工無能というやつで、同じ開発元の「侍道2」に登場する奈美さんが、打ち込んだ単語に色々なリアクションをしてくれるというものなのですが、これがなかなかリアクション豊富で、結構楽しめます。
 …何だか時代劇関連よりもUCガンダムネタに対する反応が異常に良い気がするのが気になりますが、「若本」と打ち込むと「ぶるぅあー!」と応えてくれるのには惚れそう。

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