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2005.05.30

「BEHIND MASTER」第5巻

 猿飛佐助を主人公とした伝奇アクション漫画も5巻目。この巻では佐助・清海が大久保長安が治める黒川金山で頻発する猟奇事件の謎を追う逢魔金山篇のラストまでを収録しています。
 この作品、「敵」の存在と主人公が乗り越えるべき過去が明確になってきた3巻辺りから非常に面白くなってきているのですが、この巻でも面白さは変わらず。
 佐助の戦う理由の提示、化物退治師・由利鎌之介との対立と和解、裏伊賀の魔人・赤水との死闘、事件の背後に隠された長安の真意、新しい仲間と新しい目的、そして次なる戦いの序曲と、1冊の中に様々な要素が破綻なく、過不足なく描かれており、テンポのよい話運びにだれることなく一気に、楽しく読むことができました。

 また、キャラクター的には何と言っても大久保長安の造形が実に面白い。目の前で目付役である赤水に部下を喰い殺されても表情一つ変えず、逆に巧みなロジックで赤水に精神的プレッシャーを与える様や、事件の謎を追ってきた佐助に赤水の存在を仄めかし、討たせるようにし向ける様を見れば単なる冷徹な陰謀家にも見える長安。が、ラストで彼が取ろうとした行動、そしてその後に語られる彼の目的とその先に見せた決断には、決して長安がそれだけの人物ではなく、理想と現実の間で苦しみながらも生き抜く男の姿が垣間見られて感心しました。
 この作品、綺麗な絵柄に似合わず展開はかなりシビアで、(酷たらしい)人死にも少なからず出るのですが、それでも決して読後感が悪くないのは、佐助という少年の戦う(≒生きる)理由とその成長が、有機的に結びつけられて――希望という隠し味付きで――描かれているからなのだろうな、と感じた次第。
 そして次巻では舞台は九度山へ。真田十勇士誕生前夜というべき時期を扱っている作品だけに、まだ登場していない十勇士(候補)たちがどのような活躍を見せるのかも含めて、楽しみにしたいと思います。


 …と巻末の予告が大変なことに。もしかして私みたいなのが読んじゃいけない作品になってしまうのか!? 「こんなビハを待っていた…」じゃねーよ清海!
 まあ、この作品の巻末予告はウソ予告なので大丈夫だと思いますが。


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