御隠居忍法 不老術
御隠居・鹿間狸斎の活躍を描くシリーズ第二弾。前作は基本的に連作短編集の形式でしたが、今回は長編作品と言ってよいスタイルとなっており、前作で感じた個々のエピソードがやや未消化という不満は解消されています。
さて今回の事件は、藩の山中で白骨化した死体が発見されたというのが発端ですが、駆けつけてみればその死体は消え失せてしまったという怪事。さらに近隣の村で密かに続く神隠し、跳梁する謎の山伏、何事かを隠しているかのような藩の人々、迫る微塵流の剣客…と四面楚歌の中で、狸斎が数々の事件の背後に隠された巨大な陰謀を暴くという趣向となっています。
今回の御隠居、冒頭でいきなりナニが役に立たなくなってしまうという男としての大ピンチに陥りますが、それ故…というわけでもないでしょうが今回は苦闘の連続。なかなか全貌を見せない怪事件に立ち向かう中で、ある時は自分が傷つき、またある時は親しい人間を人質に取られと厳しい戦いを強いられます。もちろんそれだけに最後の勝利の味わいは良く、それまでさんざん御隠居ともども振り回された溜飲が下がった思いがありました。
主人公の設定が設定だけに派手さはないですが、かといって枯れてしまっているわけでもない、そんな深みのあるエンターテイメント作品として、楽しい作品でした(ちなみにこのシリーズ、勤め先の年配の方が大ファンで熱心に薦められたのですが、なんとなくわかるような気がします)。次回作がまた楽しみです。
「御隠居忍法 不老術」(高橋義夫 中公文庫) amazon bk1
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