堅調な短編集 「御隠居忍法 鬼切丸」
伊賀者の末裔の御隠居・鹿間狸斎の活躍を描くシリーズ第三弾。今回は全八編からなる短編集で、後半が連作形式だった一巻目、完全な長編スタイルだった二巻目「不老術」とも異なる印象。もちろん、収録されている作品の間で時間の流れは存在しますが、どの作品から読んでも楽しめる作品集となっていました。
基本的にはどの作品も、怪事件に巻き込まれた御隠居が、知恵と技でもって解決していくというパターンですが、それぞれに趣向を凝らしたシチュエーションで退屈することはありませんでした(もっとも、途中で山伏ネタが続くのはどうかと思いましたが。何かの伏線かと思いましたよ)。シリーズ第三弾に至っても堅調な歩みと申せましょう。
個人的には、江戸に出た御隠居が、かつての上司に説教された挙げ句に振り回されていいようにこき使われる「ただしい隠居道」がベストエピソード。ラスト一行が印象的でありました。
今月文庫版が発売される四巻目も楽しみです。
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