いよいよ佳境? 「陰流・闇仕置 悪淫狩り」
サルベージシリーズ。松平定信の隠し子・松平蒼二郎を主人公とした「必殺」的時代劇アクションの第4巻です。
「隠密」「悪党」「夜叉」と来て、「悪淫」とは一体…という気はしますが、それは置いておくとして。
各巻全三話構成となっているこのシリーズですが、この巻でもそれは同様、後にスピンオフして主役作品が描かれることとなった火盗改長官・荒尾但馬守成章が登場、蒼二郎の正体に迫る第一話、新田義貞公の愛刀・鬼丸の複製を巡る陰謀譚の第三話、そして蒼二郎の相棒である辰次の過去が描かれる第三話と、バラエティに富んだ構成になっています。この辺り、今までの巻で一番バランス感覚に富んでいる印象があります。
その中で異彩を放っているのは、蒼二郎が脇に徹している第三話。伝説の渡世人として恐れられた辰次の過去の女と瓜二つの女が現れ、揺れる辰次の心。だがその女にはある目的が…と、いうわけで、筋立て的には新味はありませんが、暗く終わりそうだった物語が希望のある締め方となっていて、嬉しい意外さがありました(そしておそらく、このエピソードに登場する女が、「悪淫」なんでしょうなあ)。
個人的には、剣術・剣技のみならず刀剣そのものにも造詣の深い作者ならではの、刀剣奇譚と、蒼二郎の孤独な心の旅路が交錯する第二話が一番のお気に入りであります。
さて、宿敵たるにふさわしい火盗改長官という存在も登場し、いよいよ佳境にさしかかった感のあるこのシリーズですが…果たしてどうなることでしょうか。
「陰流・闇仕置 悪淫狩り 松平蒼二郎始末帳」(牧秀彦 学研M文庫) Amazon bk1
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