想う心が呼ぶ悲劇 「外法師 冥路の月」
外見は10歳だが中身は25歳の外法師(≒在野の陰陽師)・玉穂の活躍を描くシリーズ第二弾。
吉祥天女の導きで、大納言道綱の娘の周りで次々と起こる怪異に立ち向かうことになった玉穂ですが、守るべき姫君は魂が抜けたようで何も語らず、自身も何者かの術にかかってネガティヴ思考の堂々巡りに…という展開です。
大納言邸で夜毎燃える怪火、姿を見せなくなった夜の月、玉穂らをつけ狙う覆面の凶漢、何者かの術の干渉といった怪事件の数々の果てに、時満ちたかのように現れる亡霊。苦闘の果てにその正体と事件の真実にたどり着いた玉穂が見るのは、純真な心を苛んだ周囲の人間たちの悪意と、邪悪の誘いに歪められた切ない想い――
というわけで、前巻に引き続き、怪異と同時に、怪異の背後にあるもの、怪異の引き金となるものである、人の心の昏い部分・闇の部分を、丹念に描き出した印象のある作品です。
それだけに、少々精神的にキツいシーンもありますが、最悪の事態から二つの魂を救ったのが、人(+α)の善意であったというのは、甘いようにも見えますが、しかしやはり救われた気分になりますし、物語として「正しい」のではないかと思います。
主人公が10歳の少女の体という、およそ最弱に近い状態に設定されているのも、怪異に立ち向かい打ち克つには、(物理的なものであれ霊的なものであれ)単なる「力」であってはならない、という主張の表れであるのかな、とも思わされた次第。
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