「武死道」第1巻 武士道とは土方に見つけたり
待ちに待っていたヒロモト森一&朝松健の「武死道」単行本第1巻がようやく発売。Webコミック「GENZO」で連載されているこの作品、単行本になってからまとめて読もうとじっと我慢していたのですが、さてようやく手にした「武死道」の世界は…いやもう何というか、「スゲェもん見た!」というのが正直な感想であります。
この作品、朝松健の「旋風伝」が原作ではあるのですが、背景設定と登場人物が同じの他はまるで別の物語としか言い様のないヒロモトワールドが満開。特に仙頭左馬ノ助(名前違うんだなあ、原作と)の狂いっぷりは、あまりにもヒロモトキャラそのまんまでひっくり返りました。
とりあえず、原作のことは忘れて読んだ方が素直に楽しめるかもしれません。
しかし、この第1巻で出色なのはなんと言っても土方歳三のキャラクター。土方と言えば誰もが思い浮かべるあの洋装姿の写真を元にしながらも、そこから受ける印象に比べてこの作品の中で描かれる土方像は、はるかに野性的で、暴力的で、そして何よりも魅力的と言えます。
何と言いますか――文章で本の感想を綴るものとしてこれだけは言ってはいけないこと、敗北宣言以外の何者でもないのですが、この土方の魅力は、実際の絵を見て下さい、としか言いようがありません。
実際の土方がどのような人物であるかは(記録に残されたものを除けば)知るよしもありませんが、この「武死道」の中で描かれた土方は――初めは新之介と同様に違和感や反感を感じるかもしれませんが――まさしく我々が心に抱く、そしてこうあって欲しいと期待する「土方歳三」そのものであったと感じた次第。
正直、第1巻ラストで描かれる土方の死の姿はあまりに鮮烈で、ここで「武死道」完! となっても納得できてしまうほどのインパクトではありますが、しかしこの先、本当の物語は(おそらく)これから。
第1巻では読者と同じ目線でもって土方を見ていた新之介が、その土方の「生きろ!!」という言葉を背負ってどのように生き抜いていくのか。
そして、執拗に繰り返される「死に場所」「サムライ」「生きる」「武士道」といった言葉の、この作品ならではの意味がどのように描かれていくのか。
期待して待ちたいと思います。
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