「闇鍵師」第1巻 枢り屋初お目見え
「勇午」の赤名修が、劇団☆新感線の中島かずきと組んで「漫画アクション」誌で好評連載中の「闇鍵師」がいよいよ単行本化。
第1巻では、主人公・くるり屋錠之介登場編の「枢り屋」、妖刀に魅入られた浪人の辿る悲劇を描いた「逆縁の太刀」、そして手妻遣いを狙った猟奇殺人と手妻遣いの美女の魂が複雑な交差を見せる「胡蝶の夢」の全三話が収録されています。
基本的に雑誌連載時に全て読んでいたのですが、改めてじっくりと読み直してみると、やはりまず何よりも赤名氏の圧倒的な画力に感心させられます。舞台は江戸の町、主人公も錠前師という表の顔を持つという、いわば地に足のついた世界の中で描かれる物語だけに、その世界を壊さない(しかもその中に世界を壊さんとする異物たる魔を内包しつつ!)で描ききる画力が必要とされるわけですが、氏の画はそれに見事に応えていると言えるでしょう。
そしてまた、人の心の闇が魔を喚び、魔と化すという、伝奇もの・ホラーものにはしばしば見られる設定を用いつつも、それを封じるに「錠」という形を与えて、心の闇というわかったようなわからないような代物を具現化してみせた原作の中島かずき氏の着想もまた巧いと思います。
個人的にこの巻の中で一番印象に残ったエピソードは、「逆縁の太刀」。
「魂の地獄」とも言うべき壮絶な愛憎の中でのたうちまわる浪人夫婦の姿を容赦なく描きつつ(「但し一回五十文だ」の台詞はあまりにキツすぎる…)、物語のラストでその裏にあった美しい情を描くという展開にうならされつつ、さらに魔の封じられた錠の姿に感動させられるという、実に見事なドラマであります。
なお、巻末のあとがきによれば、江戸とは魔を封印するために作られた都市であり、錠之介らは、その魔を封じる異能の民、「まつろわぬ民」(出た!)とのことで、これから先どのようにその設定が生かされるか、興味深いことです。
ちなみにこのあとがき、赤名氏の方が新感線の舞台(アオドクロ)に惚れ込んで中島氏を指名したとか、錠之介のモデルは沖雅也とか、面白いエピソードが多く、こちらも満足。
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