「魔剣烈剣」 天才エンターテイメント作家の源流
先年惜しくも亡くなられた横山光輝先生のごくごく初期のこの作品(全作品でも三作目、時代ものでは二作目)、実に50年前(!)の作品ではありますが、今読んでも全く古びたところのない痛快アクション活劇でありました。
主人公は無双の剣の腕を持つ浪人・山本龍馬。彼が不思議な縁で知り合った少年・照之助、実は越中富山守に刀鍛冶の父を殺された少女・早百合を助けて富山守に戦いを挑むというのが基本ストーリー。そこに龍馬を助ける好漢・村雨次郎、名はキャラを現す敵役・人斬新九郎、追いつめられた富山守が雇った忍者集団の長・山彦軍太夫と、多彩なキャラクターが登場。
個人的には、主人公の親友で剣術と手裏剣術の達人として描かれる無頼浪人・村雨のキャラクターがお気に入り。友情と義侠心から大名相手に真っ向から勝負を挑み、また(龍馬同様)密かに早百合に心惹かれながらもそれを押し隠す(かのように見える)男臭さ充満のキャラであります。ビジュアル的に、横山ファンにはお馴染みの横山初期作品常連の村雨顔なのもポイント高し。
一方、筋立てとしては、基本的にシンプルな敵討ちものではありますが、そこにこの多士済々なキャラが絡み、さらに、抜けば嵐を呼ぶ黒竜とその力を抑える白龍という二本の名刀、富山守を守る山彦族と龍馬たちの助っ人・甲賀流忍者との忍者同士の死闘(横山作品初の忍者バトルであります)、正義の義賊白龍党の活躍と、ガジェットも盛りだくさんで、まったく飽きることなく最後まで楽しく読むことが出来ました。
当時の漫画界の事情はよくわかりませんが、この作品がおそらくは当時で驚きと好評を持って迎えられたであろうことは想像に難くありません。
巻末で横山先生ご自身の「私の漫画に欠かせない、スピード感と娯楽性は、この当時からあったようです」という言葉が示すとおり、その人生の最後まで我々読者を飽きさせることなく楽しませて下さった天才エンターテイメント作家の源流とも言える佳品であります。
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