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2006.01.09

TVドラマ「里見八犬伝」前編

 八犬伝特集第四回は、ようやくまとまった時間が作れたので、ビデオに撮っておいたTBSのTVドラマ「里見八犬伝」。この特集のきっかけとなった作品です。前後編で約四時間前後の大作ということで、今回はまず前編のみで。
 前編では、原作で言えば玉梓と里見家の因縁・伏姫の自害・一連の信乃のエピソード・道節の火定・芳流閣の決闘・荘助の刑場破り・道節の管領暗殺失敗の辺りまで。以下、ざっと感想を。

○全ての発端となる玉梓の事件。原作よりも一世代後に設定されており、伏姫の悲劇とほぼ同じ時期の出来事となっています(つまり玉梓と伏姫はほぼ同世代。二人を対比させるのであれば、まあアリの改変でしょう)

○しかし何だか不思議なのは、八房のやの字も登場しないこと。ネガティブな意味で「犬」を使うというのは、まだわからないでもないですが、そうすると主人公たちが犬士と呼ばれるのはどうなのでしょう。人畜婚姻譚が何かまずかったのでしょうか。

○無駄にガチっぽいイヤらしさを醸し出す泉ピン子。非常にはまっているのですが、TBS臭さ全開のキャスティングですな

○寂寞道人(道節)の火定シーンは合成もなかなかうまくいって迫力あるシーンに。

○左母二郎にバッサリやられる間もなく道節に助けられる浜路。しかし浜路、いくら助けてくれたとはいえ初対面の相手に村雨丸預けちゃいかんよ

○左母二郎あっさり退場…と思ったら何か変な感じになって左母二郎復活! 勝手に崖から落ちた浜路(…)に気を取られた道節の肩から現れた玉をくらって今度こそ退場しますが、田辺誠一がいい具合に色悪的キャラを演じていて良かったですね。

○村雨丸を届けに来た信乃の前に現れた足利成氏を演じるは、角川映画「里見八犬伝」で信乃を演じた京本政樹。面白い因縁ですし、ヒステリックな成氏のキャラにも似合っています。

○あれ、古河の御所に陣内孝則と勝地涼がいるように見える…と思ったら赤岩一角と大角でした。この辺り、設定が相当変わっている様子(というか、ここで大角が出ないと前編で八犬士全員が顔見せできなかったことがラストまで見てわかりました)

○何というか微妙なアジアンテイスト漂う芳流閣。うーん油断できんな室町文化。そして大暴れする信乃ですが、もうアクションがアクロバティックすぎ&飛びすぎ。さすがは牛若丸だ(違

○悪の秘密基地っぽいところで悪の幹部っぽいことを言う玉梓。おお、菅野ちゃん頑張りました両肩脱ぎ。胸には蜘蛛っぽい印章。今作の玉梓のイメージは蜘蛛なのですね。

○小文吾の実家・古那屋で犬士たちに因縁を語る丶大法師。「その牡丹の花は里見の紋章…」ってそうだったでしたか? 「安房は未だ日の光が差すことなく…」って、さすがに滅びますよ物理的に、とつまらない突っ込みを入れたくなりました。

○しかしぬいさんいい女だ…機転が利くし可愛いし。原作での古那屋の下りは歌舞伎チックな展開で好きなのですが、こちらでは一切なり。残念ですが、ぬいさんが生きてるからまあいいか<そうか?

○里見義実と丶大法師が久々の対面をしているところで突然樹から樹へ飛び移る忍者チックな刺客が…と思ったら何と犬江親兵衛。山下定包の家臣が父だったそうですが…古那屋の下りがオミットされたためにこの子が一番設定変わったんですなあ。そして丶大捨て身の説得にあっさり籠絡される親兵衛。素直な子だ…

○荘助のところに向かう途中で毛野の一座に出逢った信乃一行。ああっ、浜路がいる! ほとんど不死身の浜路ですが、信乃ともの凄いすれ違いっぷりに何故だか微笑ましい気分に。

○荘助が簸上宮六に刃を向けるのが、虐待されていた庄屋夫婦の仇討ちではなく浜路を守るためというのは、今の人間の感情からするとわかりやすくてなかなかいいアレンジではないかと思います。しかし渡辺いっけいさんはいい芝居するなあ

○道節の前に現れる船虫。顔見知りだったのかこの二人…って姨雪代四郎の娘って設定なのか! 今回のドラマ化で一番驚いた改変かもしれません。しかしその後で船虫を襲う悲劇は、ファンタジーものから一転バイオレンスものになってしまったようで後味悪かったですね。

○そして単身管領を襲う道節ですが、原作通り失敗。そして彼の前に立ち塞がる籠山逸東太がTUEEEEEEE! さすがはハンガーヌンチャクの使い手(違。にしても武田鉄矢悪人顔になったなあ

○「名もなき通りすがりのただの坊主」(ってすごい念の入った部外者のふりだ)丶大の助っ人でその場を逃れる道節ですが、冷静に考えれば火を操る人が村雨丸を持つのはやはり相性がよくないのでは…。しかし村雨丸は振るう度に水しぶきがあがりまくっていて、一歩間違えればギャグですがなかなか面白い映像表現だったと思います。

○蜘蛛から忍者を生み出す玉梓様。ますます悪の女幹部みたいだ。この忍者たち、外からでは全く目や表情が見えないところといい、非人間的な動きの構えといい、化け物めいていてなかなかよろしい。…しかし、ライオン丸とか出てきても違和感ない世界になってきました。

○そして毛野の奮闘虚しく怪忍者たちに奪われた浜路…いや浜路姫。彼女を求めて四犬士は走る…というところで後編へ


 と、色々と突っ込みはいれましたが前編までの段階では、予想していたよりもなかなかよくできていたと思います。ちゃんと前編中に(覚醒していない者・仲間入りしていない者も含めて)八犬士全員登場しましたしね。
 原作にある有名なシーンもイメージを崩さない程度のアレンジでビジュアライズされていましたし、八房が全く無視されたのを除けば、それなりにきちんと「里見八犬伝」していたのではないかと思います。
 ただ、(あまりこういうことは書きたくないのですが)浜路のキャラクターはもう少しどうにかならなかったのかしら…典型的な足手まといのお姫様ヒロインすぎて、何か深い意図があるのかとすら考えてしまいましたよ。

 何はともあれ、後編も楽しみに見ることが出来そうです。


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