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2006.02.03

「現代語訳 南総里見八犬伝」


 八犬伝特集その九は、白井喬二による現代語訳「南総里見八犬伝」。滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」を現代語で抄訳して文庫二冊に収めた、いわばダイジェスト版ではありますが、さすがは大衆文学の祖の一人であり、自身優れた伝奇時代小説作家であった白井喬二先生だけあって、ダイジェストにありがちな食い足りなさやドタバタ感とは無縁な、一個の作品としてきちんと面白い本となっています。

 ご存じの方も多いと思いますが、元々の「南総里見八犬伝」は、相当に長大な物語。一番手に入れやすかったと思われる岩波文庫版で全10巻というボリュームで、しかも、全体の後半部分、最後の犬士・犬江親兵衛が本格登場した後は、物語のペースがそれまでより目に見えてスローダウンしていることもあり、その存在が人口に膾炙している割りには、現代の読者が気軽に手を出してみるにはあまりにも厳しい作品であります。

 自然、抄訳版の「南総里見八犬伝」が、児童向けも含めて様々に出版されるわけですが――そしてその全てをチェックしたわけではもちろんないですが――この白井版が特に優れて感じられるのは、大半の抄訳版でオミットされる親兵衛の京での物語をはじめとして、抄訳ながら原典全体をほぼ収録することに成功していること。また、構成が原作と同じように一回毎に区切ってあるのは、原作との対象がし易くて個人的にはかなりありがたいところです(上記の後半部分については、やはりかなりダイジェストされて30巻くらい一気にまとめられていたりしますが…)

 もちろん、単に構成の問題だけでなく、現代語訳についても、原典のエッセンスを活かしつつも、現代語としてきちんとわかりやすく読みやすいものとなっており、八犬伝に興味を持った方が全体を俯瞰するために手に取るにはうってつけの本かと思います(もっとも、文庫二冊とはいえ、文庫としては桁外れの厚さと分量があるのですが…)。
 注釈や作品解題等、付録も充実していますので、興味のある方は是非。そしてこの作品を文庫に収めてくれた河出書房新社には個人的に拍手を送りたい気分です。


「現代語訳 南総里見八犬伝」全2巻(白井喬二&曲亭馬琴 河出文庫) 上巻 Amazon bk1/下巻 Amazon bk1


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