「怪~ayakashi~ 化猫」序の幕 ポップでカラフルな凄玉
深夜アニメ乱立する中で、全三編の怪談話を放映しようというずいぶんなチャレンジャーな企画「怪~ayakashi~」もいよいよラストの作品に。
他の二本は原作付きであったのに対し、この三作目「化猫」は原作なしと、海のものとも山のものともつかぬ作品だったのですが…いざ実際に作品を見てみたら驚きました。最後になって凄玉を投入してきやがったな、という印象です。
「化猫」と聞いて、最初は鍋島の化猫騒動でもやるのかと思えば、物語は全くのオリジナル。舞台は江戸時代のとある武家屋敷、輿入れを目前に控えた娘が何者かに殺害され、その後も続く怪現象に挑むは、ふらりと屋敷を訪れた謎の薬売り。妖しげな美貌の持ち主であり、不思議な体術・妖術(?)を操る彼が、事件を起こしているのは物の怪、それも化猫――と看破するまでが第一話で、文章にすると単純なお話ではありますが、いやはやこれほど実物を見なければ意味がない作品も珍しい。
何しろ、画面構成が実にポップでカラフル。その奇妙に様式美すら感じさせる華やかさは、歌舞伎チックなものも感じさせますが、むしろ目にも綾な絵双紙を眺めているような印象。絵柄的にも、アニメでありながら、むしろ和紙による貼り絵チックな味わいが持たされており――何しろ、よく見ていると画面上の絵に皺が寄ったり消えたりしているのだから驚き――怪談でありながら、絵を見ているだけで何だか楽しい気分になってきます。
その世界を動き回るキャラクターたちも、何とも言えぬ戯画めいたおかしみのあるデザインで、時代劇や怪談と聞いただけで身構えてしまいそうなカタギの衆が見ても理屈抜きで楽しめるのではないかと思います。
もっとも、そんな世界と人物が彩なす物語は、おそらくはかなりシリアスなものになる予感。登場人物たちも、皆どこか一癖も二癖もありげな印象で、そしてまた、舞台となる屋敷も、何故か猫を飼わないといういかにも化猫譚にふさわしい因縁を感じさせるものとなっています。
そんな中でもっとも怪しい、そして妖しいのが主人公とも狂言回しともつかぬ薬売り。隈取りともつかぬメイクに、背中の笈に詰められた不思議な小道具の数々、そして、相手の形・理・真を見極めることで物の怪を斬ることができる退魔の剣を持つという彼のキャラクターは、「怪しいのはその通り」と自ら認めるほどの怪人物でありますが、ヒーロー性も十分過ぎるほどで、事件の謎を解き明かしていくであろう彼のこれからの活躍が楽しみです。
脚本も横手美智子氏だし、これはかなり期待できそうですよ。お奨めです。
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