「乱飛乱外」第1巻 くノ一大乱戦
頭の角のために村八分にされていた孤独な少年・雷蔵。ある日、傷を負って倒れていたくノ一・篝と出会い、介抱する雷蔵だが、彼女はさる戦国大名の落胤である雷蔵を探していたのだった。かくて彼女とその仲間たちとともに、お家復興のために旅に出る雷蔵だが、次から次へとトラブルが…
ある意味少年漫画の定番たるおちものの時代劇版とも言うべき本作、優しいばかりで大した取り柄のない(?)少年が、ある日突然可愛い女の子(…若干一名異なるのもいますが)たちに囲まれてさあ大変、という実にわかりやすいストーリーであります。
個人的にはこのテの作品はあまり好きではないのですが、本作はタイトル通り敵味方入り乱れての大乱戦(「乱飛乱外」とは、乱れているさま・乱暴なさまの意)、ギャグのテンポはとても良いし、キャラクターも個性的。画も達者ですし、普通に漫画として面白い作品となっていました。
面白いな、というかうまいな、と思うのは、篝の操る忍法・神体合の描写。初めて口づけを交わした殿御の視線を受けると、ゾクゾクきてパワーアップしてしまうという…まあその、描写的にかなりナニなのですが、お色気的にもラブコメ的にも面白い技かと思います。
そしてまた、その設定がうまく生かされたのがこの第1巻のラストのエピソード。主君たる雷蔵への恋心が押さえられなくなってきた篝は、思わず彼に「自分を見ないで」と言ってしまうのですが、それが、雷蔵がかつて村八分にされていた頃にぶつけられた心ない言葉を思い出させてしまい――という展開で、ラブコメでは定番のすれ違いを、設定とうまく絡めて見せるのには感心しました。
果たして雷蔵はお家復興に成功するのか、篝の、くノ一たちの恋心の行方は――肩の力を抜いて、でも少しだけ真面目にこの先の展開を楽しみにしているところです。
…しかしあれだ、本作のMVPは、一歩間違えると容易に少年誌にあるまじき展開になりかねぬところを見事に引き締める「位牌の母上」でしょうな。個人的には懐かしのボヒョーギースを思い出しましたよ(あんなにしゃべったりしないけどね)。
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