「聖八犬伝 巻之四 庚申山の怪猫」
「聖八犬伝」も残すところあと二巻、前の巻で関東に散った犬士たちそれぞれの冒険が、この巻では描かれます。
まず登場するは、上州白井城に一族の仇・太田道灌を狙う犬山道節。いまだ己が里見の犬士と知らない道節ですが、白井城潜入のために利用しようとした荒芽山の盗賊の長・酒顛二が、犬川荘助の仇敵であったことから彼と知り合い、犬士の存在を知ることとなります。
犬士二人が手を組んだことにより、道節は首尾良く城に潜入し、荘助も酒顛二を討ち取ることができたものの、道節が太田道灌の影武者にして真の仇である怪人・風魔の罠により囚われ人になってしまうという展開。
一方、庚申山を訪れた犬飼現八は、そこで赤岩一角なる武芸者と、その息子である犬村大角の存在を知ることになって――と、ここからは八犬伝物語でも知られた場面の一つ、化猫退治の物語。
原作でもファンタジー色の強いこのエピソードですが、本作では、化猫一角が、化狸妙椿をはじめとする妖怪変化と談合するシーンがあったりして、さらにその傾向が強くなっています。
なるほど、ここで妙椿尼を出してくるのはなかなかうまいアレンジだな、と感心する一方で、これまでの史実と強く結びついた展開からいきなり日本昔ばなし的テイストになってちょっと面食らったのは事実ですが、これはこれでよしとしましょう。
そして物語は再び道節と荘助を中心とし、道節を逃がそうとして捕らえられた荘助を、風魔の罠と知りつつ救出に挑む犬士たち――というところで最終巻に続く、という展開。
果たしてあと一冊で終わるのだろうか、という不安感はなきにしもあらずですが、この八犬伝がいかな結末を迎えることになるのか、最後まで見届けたいと思います。
「聖八犬伝 巻之四 庚申山の怪猫」(鳥海永行 電撃文庫) bk1
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