「ガゴゼ」第1巻 闇深き時代の地獄絵図
本屋に行くことの楽しみの一つに、全く未知の作品に突然出会えることがあるかと思いますが、本作もそんな出会いで手にした一冊。室町時代を舞台とした、時代伝奇妖怪コミックであります。
時は1404(応永11)年、魔境・朽残谷を訪れた武士の群…それは、足利義嗣を大将とする大鬼・ガゴゼ討伐隊でありました。父・義満の命でガゴゼ討伐に来た義嗣ですが、彼の前に現れたガゴゼはあまりに巨大、まだ十歳の義嗣に太刀打ちできるわけもなく、哀れその命は風前の灯火…と思いきや、ガゴゼの前に立ちふさがったのは奇怪な仮面の少年・土御門有盛。時の陰陽頭の子である彼は、凄まじい呪力でガゴゼの力を封じますが、けた外れの力を持つガゴゼは、かろうじてその場を逃れます。
しかしながら妖力の大半を失って小さな子供の姿となってしまったガゴゼは、かつての配下たる谷の妖怪たちにリンチにかけられても手も足もでない有様。かろうじてその場を逃れて放浪する彼が出会ったのは、父と暮らす少女・鬼無砂ですが…腹を減らした彼にとっては何よりのご馳走、とばかりに襲いかかろうとするも、あまりにイノセントな彼女の前には調子が狂うばかり。いつしか彼女の元で安らぎを感じるようになりますが、そんな彼の命を狙う妖怪たちの影が…
というのが第一巻のあらすじですが、とにかく絵を見てみなければ本作の魅力はわからないのではないか、と思います。何というか、日野日出志先生の絵柄を一見可愛らしくしたような絵柄は、舞台に満ちる闇と、その隙間から時折顔を出す狂気を巧みに描き出していて、とにかく無闇に怖い。
そしてそんな筆致で描かれる世界で繰り広げられるのは、登場人物(?)の九割方が化け物か、腹に一物持った奴という地獄絵図。南北朝の動乱はひとまず終結したとはいえ、未だ動乱の余燼くすぶり、そして人の世界のすぐ隣に魔が在った闇深い室町の世界で展開される物語は、全く先が見えず、また時におぞましいものではありますが、しかし一種残酷なおとぎ話という観もあり、不思議に魅力的に感じられます。
果たしてガゴゼを狙った義満の真意は何処にあるのか。その命を受けつつも、ガゴゼの力を狙う有盛は何を企むか、そしてその仮面の下の素顔は何か。そして力を失ったガゴゼは、己を狙う妖怪たちを如何に退けるのか。そしてなにより、ガゴゼと鬼無砂はこの先どうなっていくのか…
いまだ物語は始まったばかりですが、先が気になるような謎とシチュエーションが随所にばらまかれており、今後の展開が楽しみです。
というか、第一巻のラスト一ページの地獄絵図のインパクトがあまりにも大きくて、この後どうなるか、読んだ人は絶対気になると思いますよ、ホント。というかありゃあんまりだ。
ちなみに本作、Webコミック誌「幻蔵」で連載中とのこと。単行本派なので「幻蔵」はチェックしていなかったのですが、この時代伝奇率の高さは一体どうしたことか。素晴らしい。
| 固定リンク
コメント
三田主水さま。
こんばんは。ごぶさたしています、ケイトです。
『ガゴゼ』①巻、紹介文に惹かれて買ってしまいました(笑)。
とりあえず第一印象は「へそ…」。
(↑…どこに眼ェつけてんだって)
イエイエええと。
いまはまだ忙しいので第1話だけしか読まなかったんですけど、ご紹介の通りかなり面白そうな内容ですね。私も先に期待しています。てゆか禁を破って全部読んでしまいそうです(笑)。
あ、例のモノも買いましたよ!
そうか、肉まんを用意すればいいのか…。
(↑…だから、どこに眼ェつけてんだって)
投稿: ケイト | 2006.08.26 01:20
ケイトさんこんばんは。お忙しいところどうもありがとうございます。
結果的に騙したことにならなければいいのだけれど…とドキドキしています。
と、肉まんって何でしたっけ?
投稿: 三田主水 | 2006.08.29 01:04
三田主水さま。
こんばんは。まだおあずけ中のケイトです(笑)。
あ、肉まんは、『おとぎ奉り』⑧巻の巻末オマケのことなんです。関係ないところに書き込んでしまってごめんなさい。
ホントは「一言掲示板」にでも書けばよかったのでしょうけど……書き込もうとした日、何故か表示されなかったのです。(な、なんで~??)
どうも失礼致しました…。
投稿: ケイト | 2006.08.31 00:23
ケイト様:
おお、なるほど。そういえばまだ8巻買ってなかった…
一言掲示板は、時々行方不明になるのでごめんなさい。リロードすると復活することもあります。
投稿: 三田主水 | 2006.09.01 01:30