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2006.10.29

「天保異聞 妖奇士」 説四「生き人形」

 何だかもう毎日「いろはにほへと」とこれの感想を書いている気がしてきましたが、何はともあれ第四話「生き人形」。今回は異国の少女アトルが初登場、彼女を軸に、「異人」とは、「人」とは何かという物語が展開されます。

 偶然出会ったアトルが異人であることを知り、何くれと気にかける往壓。折しもアトルがいた見世物小屋周辺で拐かしが頻発、蛮社改所や南町奉行所はアトルと彼女の馬・雪輪を怪しいと睨みますが、往壓はそれに反発して…という展開になります。
 アトルは異人と言われつつも、往壓たちと異なるのは「人種」であって、種として異なる「異界のもの」や生き人形のような「人ならざるもの」とはもちろん別物であるのは言うまでもないこと、と思えるのは我々が現代人だから。しかし、この天保当時の人々にとっては、両者はイコールであり、小笠原様たちの反応の方がむしろ普通だったということなのでしょう。
 そんなものの見方に反発し、アトルを庇おうとする往壓(前回まで登場していた央太といい、世捨て人みたいな生活をしていたわりには意外と人間との関わりを大事にするようですが、これは異界を覗いた者や異人の存在が、他人事とは思えないからなのでしょう)ですが、そこで往壓が正しい! と単純にならないのがいかにもこの番組らしいところ。

 そんな往壓に向けられた宰蔵の厳しい言葉は、一歩間違えるとマズい内容ではありますが、しかしそれもまた一つの真実。その後の展開にも現れているように、異人を護ろう・救おうとする気持ちもまた、異人を自分と異なるモノとして見ている点では等しいわけであり、本人の意識はともかく、一種の傲慢さ、ということなのでしょう。
 …結局は往壓の言葉のように、正しいモノは一つではないのですが、そうそう簡単に答えは出ない(そしてエンターテイメントでこっちに踏み込むとドツボにはまりやすい)問題ではあります。往壓の「誰もが異人だ」というのももちろん正しい答えではありますが、それで全ての解答になるわけでもないのでしょう。おそらくは、この先も物語中にしばしば登場してくるのではないか――と個人的には思っています。
 …しかしビジュアル的には(名前も)アビが一番ナニだよなあ。

 アビと言えば、今回もほとんど全く役に立たなかった往壓以外の奇士たち。いい加減アビの銛→えどげんのバズーカ→妖夷に効かないのコンボは脱してほしいものです。そういう意味では、異界の力を使いこなしているかのように見える鳥居側の方が、より有効な手段を用意しているように思えます(しかし鳥居がこの時点で量産型妖夷を出してくるとは…何だかもう終盤みたいですね)。
 一方、今回の妖夷は、その生まれ故にか、ほぼ万能に見える往壓の漢神でも力を引き出すことができない存在で面白かったのですが、それに対する往壓の対抗策は、自分自身から漢神で武器を取り出すというもの。この手があるならば、わざわざ妖夷の正体暴く必要ないんじゃない? という気がしないでもなく、余計に往壓強し! のイメージが強くなってしまうように思えます。
 というかもっと重火器だそうよ! 重火器!

 などと突っ込みたくなるところはありますが、相変わらずそれなりに面白いこの作品。見せ物小屋――というより娯楽一般――に対する禁令の話(そしてそれに絡んで賄賂で目こぼしする岡っ引き)や、武士でなければ刀を下げられないといった、知っている人であれば当たり前だけど知らない人であれば全く知らない当時の事柄をさらりと入れ込んで、それを単なる設定説明だけでなく物語や人物描写に絡めているのは好印象です。
 そして次回は…また重い話になりそうですな。


 と、これは蛇足。今回、「四十といえば隠居してもいい年だ。なのに、居場所を探して逃げ回るのも情けないじゃないか…」と、前向き何だか強がってるんだかわからない往壓の言葉が、かなり印象に残ったのですが、これはやっぱり見ているこちらも年だからなのかなあ、とちと苦笑しました。


関連記事
 「天保異聞 妖奇士」 説一「妖夷、来たる」
 「天保異聞 妖奇士」 説二「山の神堕ちて」
 「天保異聞 妖奇士」 説三「華江戸暗流」

 公式サイト

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