« 「天保異聞 妖奇士」 説九「面と怨」 | トップページ | 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 ただ呆然の大技炸裂 »

2006.12.04

「みぃつけた」 愉しく、心和む一冊

 「しゃばけ」シリーズの最新作は、番外編ともいうべきビジュアル・ストーリーブック…つまり絵本。幼い頃、兄やたちとも出会う前の、五才の一太郎と、鳴家たちとの出会いが描かれます。

 ストーリー的にはいたって単純。熱を出して寝ていた一太郎と、そこに現れた鳴家たちとの隠れ鬼が、一冊使って描かれるのみ。
 この隠れ鬼で鬼役となるのは一太郎、彼は鳴家を捕まえて、友達になってもらおうとするのですが、もちろん鳴家はすぐに捕まるわけもない。冷静に見るとおやじ顔のくせに妙にかわいい鳴家たちが、きゅわきゅわ言いながら逃げまどう様は、なかなか愉しく、心和むものがあります(あと、お医者さんの真似するシーンのかわいらしさは異常)。

 この本を眺めていて思い出したのは、小学生の頃、熱を出して寝込んでいた時のこと。こういう時って、苦しいながらもちょっと退屈で――そして何よりも寂しいもの。みんなが楽しく外を駆け回っているのに自分だけ…と思いながら天井を見上げると、天井の模様が何だか人の顔のように見えてきて、それはそれで空想を刺激したりして。
 そんな、誰にでもあるような記憶を、本書は思い出させてくれて、そういう意味でも心温まるものがあります。

 本当に絵本であって、シリーズのミステリ要素は全くありませんので、シリーズファン全てにおすすめ…というわけにはいきませんが、柴田ゆう氏の挿絵は本当に美しく、「しゃばけ」シリーズのキャラクターものとしての側面が好きな人であれば、絶対楽しめると思いますし、シリーズを離れた純粋な絵本としても楽しめる一冊であります。


 …にしても、兄やたちよりも先に鳴家の方が一太郎と出会っていたというのはちょっと意外に感じたりして。


「みぃつけた」(畠中恵&柴田ゆう 新潮社) Amazon bk1

関連記事
 しゃばけ
 「ぬしさまへ」 妖の在りようと人の在りようの狭間で

 公式サイト

|

« 「天保異聞 妖奇士」 説九「面と怨」 | トップページ | 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 ただ呆然の大技炸裂 »

コメント

三田主水さま。
さ、先を越されたー!!
私も本やさんで見つけて、買って、読んだので感想書こうとしたのですが、三田さまが書かれてらっしゃるのを見つけて「ひょわー!」と叫んでしまいましたよ(笑)。
『みぃつけた』、ストーリーはもちろん、柴田ゆう先生の絵がとてもかわいらしい作品でしたね。
また第2弾も出してほしいなと想っちゃいました。(^-^)

投稿: ケイト | 2006.12.05 00:17

はははは、早い者勝ち(笑)

「ねこのばば」も「おまけのこ」も読んだのに、こちらの感想を先に書いてしまいました。

本文にも書きましたが、鳴家は本当は顔がコワイのに異常に可愛らしく描かれていて楽しいですね。

投稿: 三田主水 | 2006.12.09 01:35

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「みぃつけた」 愉しく、心和む一冊:

» みぃつけた [畠中恵] [+ ChiekoaLibrary +]
みぃつけた畠中 恵 柴田 ゆう 新潮社 2006-11-29 本屋さんで平積みになっていたので…買ってしまいました。あぁ!まだ『うそうそ』を読んでいないのに…!でもかわいくてかわいくて、買わずにはいられません。 これは『しゃばけ』シリーズでおなじみの若だんなが、ずーっとずーっと小さかった頃のお話です。病気で寝てばかりいて(今といっしょですけど)、ひとりぼっちでさみしい思いをしていた若だんな。そんな生活の中で彼が「みつけた」のは…。んふふ。思わず笑みがこぼれます。その物語に、絵本みたいに、柴... [続きを読む]

受信: 2006.12.04 11:56

» みぃつけた/畠中恵 [Crescent Moon]
 ひとりぼっちで寂しく寝込む幼い一太郎が見つけた「お友だち」は、古いお家に住み着いている小さな小さな小鬼たち。 ちゃんと仲良くなれるかな?(帯内容紹介文より) 11月29日発売と聞いて、昨日通りすがりの本屋を覗くも見つからず。がっくり…。 今日は頑張ってちょっ....... [続きを読む]

受信: 2006.12.04 12:49

» 『みぃつけた』畠中 恵(著)、柴田 ゆう(イラスト) [今夜、地球の裏側で]
みぃつけた畠中 恵 柴田 ゆう 新潮社 2006-11-29売り上げランキング : 414おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools  ひとりぼっちで寂しく寝込む幼い一太郎が見つけた「お友だち」は、古いお家に住み着いている小さな小さな小鬼たち。ちゃんと仲良くなれるかな? 「しゃばけ」シリーズから飛び出した、ビジュアル・ストーリーブック。(「MARC」データベースより)  「しゃばけ」シリーズの若旦那の小さい頃のお話。  とても短いお話なので内容は読んでのお楽しみってことで... [続きを読む]

受信: 2006.12.07 18:07

« 「天保異聞 妖奇士」 説九「面と怨」 | トップページ | 今週の「Y十M 柳生忍法帖」 ただ呆然の大技炸裂 »