「危機之介御免」第三巻 繋がった二つの時代
時代劇なのに時事ネタ連打でパワフルに楽しませてくれた「危機之介御免」も残念ながら最終巻。
この第三巻では、田沼意次を付け狙う二人の若者・サダとテツに、喜亀之介たちが立ち向かうことになります。
如何なる恨みがあってか執拗に田沼を狙うサダらの陰謀は、八報を悪用しての捏造ネガキャン騒動、そして有明美具祭島での田沼暗殺計画とエスカレート。好むと好まざるとに関わらずこの騒動に巻き込まれた喜亀之介は、その危機を買って出ることになりますが…
これまでも様々な危機を買ってでた喜亀之介たちですが、この巻で彼らが立ち向かうことになるのは、自分たちと同年代の若者。同年代といっても、生まれも育ちも異なる敵味方の若者たちですが、しかし物語の中で浮かび上がるのは、彼らが、自分の進むべき道に迷い悩んでいるという点において、等しい存在であるということであります。
江戸時代と現代は、当然のことながら社会制度も文化も全く異なるものではありますが、しかし人間の頭の中身というのはそうそう変わらないもの。ましてや、若者が自分の将来に対して不安を抱くこと――もちろんその「将来」や「不安」そのものは時代によって差異はあるにせよ――自体は、いつの時代も不変でありましょう。
現代の時事ネタを満載することで無理矢理に現代と江戸時代を繋げてきたように見えた本作ですが、しかしそうして繋がった二つの時代の共通点というものが、この巻では特にはっきりと現れてきた感があります。
時代劇というのは、単に過去のある時代のことを描くのみならず、その時代を鏡として、現代という時代を、あるいは時代を超えて共通するものを描き出す力もあるもの…そんな当たり前の、しかし意外と忘れられがちなことを、本作は思い出させてくれます。
それにしても――サダの正体は、時代設定と「サダ」の名が出た時点ですぐにわかりましたが、テツの方は本名(幼名)を名乗るまでわかりませんでした。まさか○○だったとは、いやはや伝奇ものとしても実に面白いアイディアです。
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コメント
2巻で個人的に「スケールアップしすぎかな・・・?」と感じたのですが、最終話に向けて実にうまい流れの展開を見せてくれたと感服しています。
適度な長さで冗長にならず実に良い作品だと思いましたが、『第一部完』ってことは期待しても良いのでしょうか(゜∀゜)!
テツがなにげにグルメっぽさを醸し出してるあたりにもニヤリとしました。
投稿: 伯爵 | 2007.12.25 19:05
伯爵様こんばんは。
まとめて読んでみると、ああ成る程と感心できる構成でしたね。
テツのあのシーンも、正体がわかってみればこれも成る程、という感じです。
まあ、第二部に関しては…だと思いますが――
投稿: 三田主水 | 2007.12.25 23:40