「無限の住人」第二十二巻 圧巻の群像劇!
前の巻から最終章に突入した「無限の住人」の最新巻が発売されました。「不死力解明編」終盤から凄まじい盛り上がりを見せてきた本作ですが、ここに来てもその勢いは変わらず、クライマックスにふさわしい見せ場に富んだ展開となっています。
遂に江戸を捨てることとなった逸刀流。しかし彼らと、彼らを巡る様々な勢力の思惑は様々に絡み合い、いよいよもって三つ巴卍巴では足りない、複雑怪奇な様相を呈する状況となってきました。
剣士としての誇りを胸に幕府に反逆の牙を剥こうとする逸刀流。
己の誇りと命を賭けて逸刀流を追う吐鉤群と六鬼団。
吐をその座から追い、なお止めを刺さんとする新番頭・英と配下の女忍衆。
かつての上役である吐の窮地に立ちあがる偽一と百琳。
そして逸刀流最後の戦いを見届けるべく再び旅に出る凛と万次――
この巻では出番のなかった尸良を含めて、出しも出したり、個性が服を着て歩いているようなキャラクターたちの群像劇は圧巻の一言です。
振り返ってみれば実に長きに渡って描き続かれている本作ですが、初期のド派手なトンデモ時代劇バトル路線から、加賀編などの面白いんだけどちょっと地味目の人間ドラマ路線を経て、この最終章では、その両者が高いレベルで融合した感があります。
一頃減っていた変態(性的な意味でなく)剣士分を補うかのように奇ッ怪なビジュアルを誇る六鬼団と逸刀流とのバトルあり、吐を巡る悲痛極まりない肉親の情を描いた人間ドラマあり…緩急自在に多数のキャラを配置して描く本作は、やはり現在描かれている時代コミックの中でも一際抜きん出ていると言うほかありません。
(と、上で挙げた勢力分布を書いていて、逸刀流と同じくらい、吐の存在が人々の中心にあることに気づきました。この巻の中で登場人物の一人の言葉を借りて指摘されている通り、彼はもう一つの逸刀流というべき存在なのかもしれませんし、そこに本作のテーマが見えてくるようにも感じられます)
この巻のラストでは逸刀流最強メンバーが行動を開始し、いよいよ盛り上がる一方の本作。最終章とは言い条、まだまだ最終回までは遠い印象ですが、むしろ完結が一日でも遠いことを祈りたい気分であります。
しかし怖畔の顔って今までずっとメイクだと思ってたよ…(お面だったのね)
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