「諸刃の博徒 麒麟」 これもまたギャンブル
講談社の漫画雑誌はずいぶん時代ものに理解がある、というのは勝手な思いこみかもしれませんが、たとえば「ヤングマガジン」誌の掲載作品を見ると――必ずしも毎号載っているわけではありませんが――実に三つの時代ものが掲載されているのに驚かされます。
毎回紹介している「Y十M」に、最近第二部の始まった「センゴク」、そして三つ目が本作「諸刃の博徒 麒麟」であります。
時は幕末、黒船が来航し、世情騒然とする中、次々と江戸の町を騒がす事件。それに首を突っ込んでは、維持と度胸で事件を解決していく博徒・麒麟の活躍を描いたシリーズです。
麒麟が挑む先は、黒船の武力をバックに強奪を働く異国人に、表では男伊達を気取りながら裏に回れば外道な町火消しの頭領、さらには石田散薬の薬売りやら若き日の徳川最後の将軍やら、とんでもない相手がぞろぞろ。
そんな相手に挑む麒麟の武器は…命知らずのクソ度胸と、どこまでも野放図で明るいキャラクターであります。
正直なところ、タイトルで「博徒」と謳っている割にはギャンブルシーンはあまり印象に残らず(現時点で一番派手だった「懊悩の野犬」編が博打ではなく喧嘩勝負だったためかもしれません)、そこが個人的に残念なところではあります。
しかし考えてみれば、ゲームとしてのギャンブルではなくとも、麒麟が見せる己の命を賭けての大勝負は、まさしく「博打」以外のなにものでもなく、その意味では本作はやはりギャンブル漫画と言うべきなのかもしれません。
と言いつつ、やっぱり命を賭けた変態ギャンブルを見たいなあ――もっとも、その分野では「カイジ」という化け物が同誌にいるので分が悪いのですが――たとえば命がけの双六とか…などと勝手なことを思っていたら本当に双六勝負が始まったので吹きました。
閑話休題、有名な人物や事件が多いだけに、オリジナル作品を描こうとしても、一歩間違えるとそうした史実に食われかねないのが幕末ものの怖いところ。本作がその点を、博徒――さらに言えば、時代の主流から外れたアウトロー――という視点から時代を眺め、物語を構築していくことでうまく回避しているのは、なかなか見事な業前ではないかと思います。
麒麟のキャラクター同様、荒削りながらも内に秘めた爆発力と器の大きさを感じさせる作品――と言っては褒めすぎでしょうか?
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