「モノノ怪」第一巻 そのままではなく、そのものの世界
昨年のTVシリーズとほぼ平行する形で「ヤングガンガン」誌で連載開始したのが、この漫画版「モノノ怪」。
「モノノ怪」と言いつつ、内容はそのパイロット版とも言うべき「怪 AYAKASHI」の「化猫」なのがややこしい…というのはさておき、あの、アニメならではの作品世界を、巧みに漫画化してしまった驚きの一作です。
原作をご覧になった方には言うまでもないお話ですが、アニメ「モノノ怪」そして「化猫」は、特にそのビジュアル面において、アニメならではの、アニメでなければ成立しないような作品。
和紙を貼ったような質感の、極彩色のテクスチャーで彩られた空間と、それを映し出す構図と緩急付けた動き、そしてセリフ回し。原作の魅力を、漫画で、しかも基本二色刷りで再現し得るのか?
その答えはイエス――本作を見れば、そう答えるしかありません。
基本精密に、時に荒々しく描かれる画力の確かさに加えて、その場面場面を切り取ってみせる構図の妙。そして何より、動きを描き出すのにあたり、その動作と動作の間を省略せざるを得ないという漫画の制約を逆手に取ったかのような動きのリズム…
原作そのままではない。しかし原作そのものとして感じられる世界が、ここにはあります。
連載開始時には、作者が本作の直前まで同誌で「天保異聞 妖奇士」の漫画版を連載していたため、単にファンタジックな和モノを描けるから、という理由のチョイスかと思ってしまいましたが、それが全くもって自分の不明だったと言うほかありません。
尤も――あえて欠点を探すとすれば、原作の展開に忠実に、あまりにもじっくりと描写を重ねているが故に物語のテンポがかなり遅い点でしょうか。
本作が雑誌連載ということを考えれば――単行本でまとめて読む分には全く問題はないのですが――これはマイナス点と言わざるを得ません。
もちろんこれは上で述べた原作の再現性の見事さとは表裏一体であり、やむを得ない点ではありますし、これが些細な瑕疵と言えるほど、本作が魅力的なのは間違いありません。
これから物語はいよいよ後半に入り、隠された残酷な真と理が明らかにされることになりますが、さてそれが如何に描かれるのか。楽しみにするとともに、できれば、「化猫」以外のエピソードも見てみたいものだと思っている次第です。
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