「透明人間あらわる! 帝都〈少年少女〉探偵団」 空前絶後の透明人間譚
楠木誠一郎先生の「帝都〈少年少女〉探偵団」シリーズ長編第二弾は、「透明人間あらわる!」。前作「吸血鬼あらわる!」は、明治の帝都東京に吸血鬼ドラキュラが現れるという趣向でしたが、今回はタイトルの通り透明人間の脅威が、帝都を予想もつかない形で襲います。
さて、透明人間に少年探偵というと、やはり江戸川乱歩先生の少年探偵団シリーズから「透明怪人」が思い浮かびますが、本作の透明人間は、タネも仕掛けもまったくない、ガチもガチも透明人間。あらゆる意味で本物の「透明人間」であります。
冒頭で描かれる、透明人間による姿なき連続殺人に、前作の展開とあまり変わらないのでは…と思っていたら、何と主人公たる帝都〈少年少女〉探偵団と「万朝報」の面々の前に当の透明人間が出現。
なるほどこれは「透明人間の告白」か、と思っていたところに何と第二の透明人間が登場、ふむ、今回はサスペンスタッチでいくかと思えば…
その予想をきっぱりと裏切って、中盤以降、読者を待ち受けているのは、怒濤のアクション活劇。鍛冶橋の警視庁を舞台に展開する一大攻防戦は、およそ透明人間文学(って言葉はあるのかしらん)史上、空前絶後のものと断言できます。
透明人間出現の原理については、前作同様であって既にネタは割れているのですが、しかし、それを逆手に取ったかのようなこのアクション展開は、全くもって想像の範疇外。なるほど、本作の透明人間は○○から生まれたものだから、その気になれば…なのですが、前作の反則級のアイディアが、更なる進化を遂げるとは、大いに感心いたしました。
もっとも、この怒濤の展開の前に、透明人間のキャラクター性が薄くなってしまったのは残念ですが、これはまあ、元々キャラが濃かった訳でもなかったしなあ、ということで…
さすがにそろそろ真面目な読者は怒り出すのでは(手遅れ?)という気がしますし、黒幕は劇場型犯罪を狙って自爆しすぎ(これはもしかすると、何かの伏線かもしれませんが…)、そして相変わらず探偵団のメンバーの個性がわかりにくくはあるのですが、それでももうここまで来たら目が離せません。
第三作「人造人間あらわる!」にも当然手を伸ばす所存です。
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