「風の陰陽師 2 ねむり姫」 陰謀と別れの数々
都に降った黒い雪、それはさらなる凶事の前触れだった。妖魔の跳梁、そして都を覆いつくす暗雲…さらに晴明が密かに慕う咲耶子姫までもが謎の術師・藤原黒主の術中に陥ってしまう。眠り続ける姫を救うため、彼女の夢の中に飛び込んだ晴明だが、そこで待ち受けていたのは宿敵・蘆屋道満だった。
少年晴明の冒険記「風の陰陽師」の第二巻で描かれるのは、都に混乱を招かんとする怪人・藤原黒主の陰謀の数々と、晴明が経験する別れの数々であります。
第一巻は、晴明伝説から様々なエピソードが引用・モディファイされていましたが、今回はほとんど全てオリジナルの展開。晴明も、まだ学生ながら陰陽師としての活動を始めており、第一巻よりも成熟した人物として描かれている分、大仕掛けなエピソードに力点を置いて、物語が展開していきます。
その内容も、黒主が呼び出した妖魔「闇の嫗」とそれが生みだした「闇の孕み子」の跳梁、帝に見初められたことが元で次々と奇怪な術に襲われる咲耶子姫の救出、そして母の故郷・信太の森で勃発した跡目相続争いと、大きなエピソードが連続して、あるいは平行して進行。始まりから結末まで、まず一気に楽しめる内容でした。
その一方で、キャラクター面を見れば、陰陽両面を持った存在として、第一巻ではある意味もっとも人間くさい人物として描かれていた賀茂忠行が、今回は本当の悪役になってしまったのが少々残念なところ。
もっとも、その忠行の子であり晴明の兄貴分である保憲と、そして晴明への復仇に燃える道満という、陰陽双方向で晴明に対置される二人が、いい具合に味のあるキャラクターに育ちつつあり、優等生的な晴明に対してよいアクセントになっていたかと思います。
さて、物語のラストで、心の拠り所であった者たちを失うこととなった晴明。後見人である忠行は敵側につき、さらに物語の途中では超大物妖魔までも顔を見せており、晴明のこれからの道も、まだまだ険しいことでしょう。
物語の最後の最後には、この時代の超有名人の名前も出てきて、この先の展開への期待が、否応なしに高まるところです。
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