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2008.06.24

「忍法十番勝負」(その二) いよいよ大御所出陣

 昨日からの「忍法十番勝負」紹介、今日は四番勝負から七番勝負までであります。

四番勝負 古城武司
 本書に収められた十編中、恥ずかしながら唯一作品を読んだ記憶がないのが、この古城武司先生でした。唯一、私がはっきりとわかるのは、特撮時代劇「白獅子仮面」のエンディングイラストを描いていることですが、初めて読んだ古城作品は、柔らかめの絵のタッチながら、非情かつひねりの効いた忍法合戦を描き出していて、印象に残るものでした。
 今回絵図面を巡って死闘を繰り広げるのは、二つの忍者集団。その一方、かげろう組から飛騨忍党側についた裏切り者に奪われた絵図面を追うのが本編の主人公・風丸ですが、面白いのは、風丸が敵はおろか、味方の素顔すら知らされていないこと。かくて、如法暗夜を行くが如く、風丸の探索行が始まるのですが――これが実に面白い。
 誰が敵で誰が味方かわからない状況下で繰り広げられる争奪戦は実にサスペンスフルで、終盤のどんでん返しまで、一気に読み通すことができました。壮絶な決戦の後に描かれる一コマが、わずかな救いとなって心に残ります。


五番勝負 桑田次郎
 さて折り返し地点の五番勝負を担当するのは、平井和正と組んでの数々の作品を残した桑田次郎先生です。桑田作品と言えば、独特のちょっとバタくさい描線がまず浮かびますが、それは本作でも健在。その絵で展開される物語は、しかしこれまでの絵図面争奪戦とは一風変わった趣向となっています。
 冒頭から描かれるのは、深山から流れ落ちる川に次々と忍者の死体が流れていくというショッキングなシーン。今回絵図面を手にしたのは、黒雲が峰に潜む「魔王」と名乗る忍者、この魔王に挑んだ忍者たちが、次々と返り討ちにされた結果が冒頭の場面であります。その魔王に挑むは真田幸村の配下かすみ丸ですが…
 正直なところ、魔王とかすみ丸の決闘は存外あっさりとしているのですが、しかしネーミングといい、いかにも桑田キャラな悪役的たたずまいといい、魔王のキャラクターが印象に残る一編でありました。


六番勝負 一峰大二
 五番勝負を受けて、再び真田忍者かすみ丸が活躍する(使う術は違うものの、同一人物と思ってよいのでしょう)本作を担当するのは、一峰大二先生。太い描線の迫力あるアクションが印象的な方ですが、本作もまた集中の異色作の一つであります。内容こそ絵図面争奪戦ではありますが、今回かすみ丸の前に立ちふさがるのは忍者にあらず剣法者――徳川の忍者の元締めの一人であり、最強の剣法者たる柳生宗矩であります。
 かくて本作で描かれるのは、忍法対剣法の異種格闘技戦。いかにもトリッキーなかすみ丸の忍法に対し、宗矩の剣法は、超人的ではあるものの、あくまでも正当派の豪剣で、水と油の両者の戦いがクライマックスの決闘に雪崩れ込んでいく様は、大いに興味をそそります。その内容も、巻物に導火線をつけての決闘といい、宗矩の剣に立ち向かうかすみ丸最後の忍法といい、ギミック満載で漫画的楽しさに溢れている好篇でありました。


七番勝負 白土三平
 さて七番勝負にして大御所出陣。忍者漫画の一方の雄というべき白土先生の作品がここで登場です。不純物は一切抜きで、二手に分かれた忍者がひたすら死闘を繰り広げるという内容は、短編なだけに、白土忍者バトルの魅力がより一層凝縮されて感じられます。
 本作で命がけの術比べを演じるのは、一方は真田方の鳥使い・宿鳥と、己の皮膚を硬質化させた無敵の肉体を持つガンダメ。そしてもう一方は、無数の犬を操る(おそらくは)伊賀の術者・犬万――無数の数でもって襲いかかる動物たちが勝つか、不死身の肉体が勝つか? 最後の勝者の姿はあまりに意外ながら、しかしいかにも白土作品らしいものとなっております(というかこのキャラクターも白土スターシステムの一員ですね)。
 ちなみに本作は、「忍法秘話」に「犬万」の題で収録されており、こちらを先にご覧になった方もいるかもしれません。


 もう一回続きます。


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忍法十番勝負 (秋田文庫)


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