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2008.07.07

「乱飛乱外」第5巻 主人公としての説得力?

 夏だから…というわけではないでしょうが「乱飛乱外」第五巻の舞台は海。海でお姫様って…と思えば、今度のお姫様はなんと海賊、その名も海賊王女(ピラッタプリンセーザ)であります。

 次なる姫を求めて雷蔵一行がやってきたのは熊野灘。そこで難破してくノ一たちと離れ離れになってしまった彼は、当の姫の一党に拾われるのですが…豈図らんや、その姫が荒くれ者どもを率いる海賊王女だったとは。
 戦国時代、それも紀州の海賊といえば九鬼一族ですが、今回の姫君・つなみはまさに九鬼一族の姫。かつて一族郎党を異国の海賊・シウバに皆殺しにされ、ただ一人生き残った彼女は、復讐を誓って自ら海賊王女を名乗り、仇を誘い出そうとしていた…というのが今回のお話。

 まあ、戦国時代の水上豪族たる海賊と、西洋の海賊は似て非なるもののような気がしますが、それを敢えて絡めて、凄絶な仇討ち物語として組み上げてみせたのは、本作ならではの工夫だと思います
 そして、このつなみのコスチュームがまた、その、実にけしからん格好と申しますか、戦国時代に超ビキニ。時代考証はどうなってるんだ! とにこにこしながら言いたくもなりますが、まあ西洋の海賊の真似をしているのだから仕方がないですね(って、そんなわきゃない)。

 それはさておき、相変わらず絵柄、キャラ造形、アクション描写とも達者で、水準以上の作品となっているのですが、個人的には残念なところがいくつか…
 その一つは、つなみが雷蔵を好きになる説得力が今ひとつ感じられなかったこと。これまでは、各巻のゲストヒロインが雷蔵を好きになる明確な理由があったのですが、この巻では雷蔵は状況に流されてばかりで良いところがほとんどなかったように思います…(姫の過去を効かされた、というだけではどうにも理由として弱い気が)。
 が、一番気になったのは、かがりの出番がほとんどなかったことで――終盤に彼女ならではの、彼女でなくてはできない役目があったものの――これまでの活躍を、いや本作での立ち位置を考えれば非常に寂しいものがあります(よく考えたらこの巻で神体合使ってない!?)。

 まあこれはこちらの勝手な(気持ち悪い)思い入れによるもの。今回の海賊王女編はこの第五巻で完結していないこともあり、この先待ち受ける最後の決戦を見てから、この辺は判断すべきことなのでしょう。事実、クライマックスで駆けつける雷蔵一党は猛烈に格好良く描かれていましたしね。


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