「絵巻水滸伝」 第七十一回「浪子」後編 盛り上がるキャラ描写
先月から第二部の連載が開始された「絵巻水滸伝」、どうやら第二部は毎月掲載らしく(あくまでもらしい、ですが)、先日第二部第二回目の更新分が掲載されました。まずは欣快の至りです。
今回の掲載は、第七十一回「浪子」の後編。大胆不敵というか何も考えていないというか、東京の元宵節に潜入した宋江たちのその後が描かれますが、当然ただで終わるわけもなく…
章題の「浪子」の一人である浪子燕青の手引きで、首尾良く皇帝の馴染みである傾城の美姫・李師師の元に潜り込んだ宋江一行は、そこでもう一人の「浪子」である徽宗皇帝と接近遭遇するのですが、その間に梁山泊の豪傑連中が大人しくしているわけもなく――
という内容の今回、かなり原典に近い内容となっていますが、やはり楽しいのは、本作ならではの、個々のキャラクターの個性的な描写でしょう。
宋江たちが李師師のところに行っている間に、穆弘と史進は飲んだくれて街中で謀叛の歌を高歌放吟、もちろん官軍に見つかってたちまちのうちに大騒ぎ(そういえばこの二人、土地の長者のどら息子という共通点があるのでした)。この辺りの豪快さも水滸伝の大きな魅力と感じる私にとっては、何とも楽しい展開です。
一方、痛飲の後に史進らの大騒動が起きても、「出番か」と飄然と立ち上がる魯智深は、同じ飲んだくれでも実に格好良く、こういうところで個性を表してしまうのが何ともうまいと感心します。
格好よいと言えば、何とここで梁山泊最強の騎兵軍五虎将が全員登場(いつの間にか五虎将入りしている董平さんはさすがだと思います)。まさに千両役者の揃い踏み、第二部開始早々のサービスに、ファンとしては否応なしに盛り上がってしまいます(と、その一方で、全員官軍出身である五虎将が、ザルに等しい祖国の守りに複雑な感情を抱くシーンが挿入されているのがまたうまい)。
と、キャラクター描写は大いに盛り上がった今回ですが、しかしお話の方は、あまり進展がなかったというか、最初から最後まで騒動に終始してしまったというか…ちょっと物足りない印象。
特に、二人の浪子がほとんどニアミスで終ってしまったのが何とも残念であります(まあ、今回のエピソードは後々に効いてくるのですが…)
さて、梁山泊勢は無事に東京から逃れたと思いきや、ただ二人はぐれてしまったのは李逵と燕青。次回、一部の水滸伝ファン(というか私)にとってはかなり思い入れがある泰山奉納相撲編が今から楽しみです。
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キノトロープ/絵巻水滸伝
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