「柳生大作戦」第二回 日朝神器争奪戦
少々紹介が遅れてしまいましたが、「KENZAN!」誌最新号に「柳生大作戦」第二回が掲載されました。が…一読、もしかして一回読み飛ばした? と悩んでしまうような展開。もちろんそんなわけはないのですが、まだまだ全貌の見えない展開であります。
今回掲載の第一部第二章の舞台は、西暦668年の日本と高句麗。前回は475年と1592年でしたから、既に三つ目の時代が登場です。
日本で描かれるのは、新羅の諜者による草薙剣強奪未遂事件。中大兄皇子の庶子・伊賀皇子に仕える服部半蔵(「はっとりはんぞう」…ではなく「はとりべのなかくら」)により、草薙剣を奪って逃走しようとした新羅妖術師が捕らえられるのですが、この事件は、現在半島で進む高句麗討伐と、伊賀皇子からその高句麗に使者が送られたことと何やら関係が…
そして舞台は唐・新羅連合軍に包囲され、既に風前の灯となった高句麗の平壌城へ。高句麗の実権を握る泉男建と会見した伊賀皇子の使者・秦友足は、高句麗の二つの神器を託す旨、伝えられます。一つは霊的レーダーである沸流鼎、そしてもう一つは何と八岐大蛇の卵(ワンゴン様!?)…
重囲された城から神器を運び出すために友足が用意していたのは、前回冒頭で登場した百済の神器・指南亀と、金色に輝き空を飛ぶ頭八咫烏――その名も怪鳥・臘鷺守(ろうろす)であります。先生、思いつきでどっかで聞いたような名前つけるの止めてください。
が、ここで異変発生、友足の一行に紛れ込んでいた“劉仁軌”を名乗る男が騒ぎを起こし、高句麗に捕らえられていた新羅王女とともに、神器の安置された塔に立て篭もって…と、今回はここまで。
さて、前回の冒頭では百済の滅亡が描かれましたが、今回描かれるのは高句麗の滅亡前夜。前回同様、今回も登場人物たちの口を借りて、朝鮮三国時代の歴史が語られますが、個人的には全く縁遠かったこの時代の朝鮮史はなかなか魅力的に映ります(…という時点で作者の目論見は半ば成功しているように思えます)。
それにしても、本作で描かれる朝鮮神器の行方を見ていると、考えさせられるのは古代朝鮮と日本の歴史の皮肉。百済が滅んでその難民たちが日本に渡り、高句麗が滅んでその難民たちが日本に渡り…そのことを、本作は神器委譲の形で代表していますが、かつて敵対した国の民が、時を隔てたとはいえ、同じ国に逃れてきたという史実は、不思議な気分にさせられます。
と、これまた作者の術中に陥った感もありますが、物語の本筋の方は、ちょこちょことバカネタも飛び出してきて、先生いよいよ興が乗ってきましたな、というところ。
しかし前回と今回で、全く時代が違うにも関わらず、同じ名前の登場人物と同じシチュエーションが登場して――もちろんそれは計算づくですが――ちょっと混乱させられました。
何よりも、今回のエピソードが、前回の1592年とどう繋がるかが見えないのがちょっと残念ですが(目茶苦茶やっているようで前作は連載各回のキリは良かったですしね)、先が見えない物語を素直に楽しみに待つのがよいのでしょう。とりあえず怪獣(怪鳥)が久しぶりに出てきたのは嬉しいですね。
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