「モノノ怪」第2巻 漫画としてのモノノ怪世界
「ヤングガンガン」誌で連載されていた漫画版「モノノ怪」――「化猫」。TVシリーズ本編が終了して丁度一年後に、漫画版の方もここに完結であります。
この第二巻で描かれるのは、坂井家を襲った化猫騒動の結末。次々と屋敷の人間を屠っていく化猫の、形は真は理は…
と、本作はストーリー面については、「モノノ怪」本編がそうであったように、縦横に絡んだ人間関係の縁が一種のミステリタッチで描かれる本作なので、核心については触れませんが、基本的には――というよりほぼそのまんま――原作(「怪 AYAKASHI」の「化猫」)通り。
そのため、原作を既に視聴済みの人間としては、あの世界を如何に漫画として描き出したかが特に興味を引くわけですが――第一巻がそうであったように、この第二巻においても、見事の一言。
原作の独特のビジュアルを、この漫画版においては、ほぼ完璧に紙の上に落とし込んでおり、その再現度については驚くばかりです。
もちろん、原作のビジュアルをそのまま模写しただけであれば、それは漫画ではなく、単なるイラストの連続になってしまいますが、本作は、美麗な絵を描き出しつつも、そこに動きを与えて、漫画としてのモノノ怪世界を成立させていると感じられます。
と――これは今更ながらのお話なのですが、本作を読んで改めて感じたのは、アニメ(映像)と漫画(本)という媒体の違いです。
映像に対しては見る者が基本的に受動的な立場にある一方で、本に対しては能動的な立場にあると言いましょうか…要するに、映像はボーッと眺めていても流れていきますが、本は自分の意志でめくらなければいけないという、当たり前と言えば当たり前のお話。
突然何故こんなことを言い出したかといえば、映像では目を背けてしまえば過ぎてしまう場面であっても、本ではそうでもいかないという…
原作の内容をご存知の方であれば、あの場面か、とわかっていただけるかと思いますが、目を背けたくなるような残酷な真を、この漫画では否応なしにこちらに突き付けてきます。
そう考えれば、「モノノ怪」という作品の構造は、むしろ漫画向き…というのは言い過ぎですが、興味深いことです。
この蜷川氏の見事な筆で、オリジナルの「モノノ怪」を見てみたい――それが正直な気持ちであります。
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