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2008.10.31

「カミヨミ」第9巻 まさかまさかの急展開!

 三日前に亡くなったはずの夫人と共に焼身自殺した少将の謎を追って東北を訪れた天馬・帝月・瑠璃男の三人。少将の足取りを追った三人は、謎の隠れ里に辿り着くが、そこでは老人がおらず、死者が復活するという奇怪な地だった。村人たちや奇怪な怪物たちの襲撃を受けながらも、三人はこの地を支配する絲神の正体を知るが…

 明治伝奇ホラーアクションミステリ「カミヨミ」の最新刊が発売されました。この第九巻に収録されているのは、前巻から始まった「女郎蜘蛛」編。奇怪な死人帰りの謎を追って、お馴染みの三人組が東北の奥地で見たものは…という趣向であります。

 因習に縛られた村や奇怪な土俗的信仰というのは、ある種伝奇ミステリの定番ではありますが、導入部の静かな恐怖を吹き飛ばすように、この巻ではモンスターホラー、アクションホラーとしての要素が一気に前面に飛び出し、相変わらず油断のできない作品だと再認識させられます。

 個人的には、話のひねり具合に比べるとアクション度が高めかな…という気がしないでもありませんが、しかし恐怖の中にちょっといい話(?)的展開あり、お馴染みのミスリーディングあり、そして絲神の意外な正体ありと、どんでん返しもいくつかあってと、やはり本作らしい興趣があったのはさすがというべきでしょうか。

 しかし――敵の正体も判明してそろそろこのエピソードも…と思ったところで、まさかまさかの急展開。単発エピソードの一つかと思いきや、終盤で一気に「カミヨミ」という物語の本筋に関わる事件が発生し、またもや先の読めない展開となってきました。

 果たしてこのエピソードをどのように収束させるのか、そして「カミヨミ」という作品がどこに向かうのでしょうか。何だか物語自体が終盤となった印象すらありますが…


 ちなみに、作中で語られる天馬の国に対する一途な想い(信頼といいますか)は、現代の人間として読んでみると、よく理解できますし、正論ではあるものの、その後の歴史を考えるに、理想論的な色彩は否めません(それを堂々と口にできるのが天馬なのですが…)
 彼が、国家の負の部分と正面から向き合うこととなるのか。そちらも気になるところです。


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