「主水之助七番勝負 徳川風雲録外伝」 一番勝負
昨日から放送開始されたテレビ東京の月曜時代劇「主水之助七番勝負 徳川風雲録外伝」――今年の12時間時代劇で放送され、正月早々色々と暗い気分になった「徳川風雲録」の外伝であります。
しかし「徳川風雲録」自体はこれで完結した作品であり、原作である「徳川太平記」とも無関係に、ここでマツケン演じる土屋主水之助を主役に据えてスピンオフ作品を作っても…と思った私が馬鹿でした。この番組、柴錬ファン的にはもの凄いことになっております。
開始早々、洞窟の中から解き放たれる野獣のような剣鬼…三田村邦彦(!)演じるその男の名は「大峰ノ善鬼」。おお懐かしい、柴錬先生の作品にそんな作品もありましたなあ…などとこの辺りまでは呑気に観ていたのですが、その後でのけぞりました。
出獄するなり凶剣を振るう善鬼を追う主水之助が出会った剣鬼、自分の妻を縛り上げて衆目に晒し、助けたければ俺と真剣にて立ち会えと嘯くその男の名は…人面狼之助!!!
知らない方から見れば凄い名前だなあ…で終わりかと思いますが、柴錬ファンから見れば驚きそのもの。人面狼之助といえば、柴錬の剣豪短編シリーズたる「剣鬼」シリーズの一つ「狼眼流左近」の主人公なのですから…!
(ちなみにこの作品、最近このブログで紹介した「梅一枝」にも収録されています)
と、ここで遅ればせながら公式サイトを見てみれば、原作として挙げられている作品名は、「徳川太平記」とともに「剣鬼」シリーズ――何たることか、本作は「徳川太平記」からスピンオフした主水之助が、舞台となる時代も場所もそれぞれ異なる「剣鬼」シリーズの剣豪・剣鬼たちと決闘するという、ある意味夢の対決を実現させた作品だったのであります。
もちろん、登場する剣鬼の設定は相当にアレンジされており、今回の人面狼之助のエピソードも、妻を晒して決闘を続けるという狼之助の異常行動は同じながら、その背後にあるのは公金横領にまつわる陰謀劇と、その犠牲となった夫妻の悲劇であって、まるで異なるのですが、狼之助を演じる西村和彦氏の佇まいが、なかなか柴錬描くところの病的な剣鬼っぽいこともあり、結構楽しむことができました。
狼之助を憤らせた妻の行動も、これはこれでなかなか柴錬的ではないかと思います(一方の狼之助の方はちょっと甘々かな、という印象はありますが…)
人面狼之助の技が原作と異なることと(原作では凄まじい眼光で相手の動きを封じる邪剣士でありました)、享保時代の話なのに、善鬼と主水之助の師が一刀流開祖の伊藤一刀斎だったりするのはちと残念ですが…特に後者はさすがにちょっと飛ばしすぎだと思います(善鬼だけだったら同名異人でも通じたと思うんですが…いくら「死なない剣豪」でもこれはちょっと<作者が違う)。
まあ、細かいことはさておき、さすがにマツケンの貫目は安心して見ていられますし、佐藤藍子と加治将樹演じる敵討ちの姉弟はいかにも柴錬チック(健気な姉に血気に逸ってばかりの弟)だし、ちゃんと剣戟シーンでは血が出るし(別に血が見たいわけではないですが、描写としては必要なものでしょう)、初回はスペシャルということを差し引いても、今後が楽しみな作品であります。
そして次回の剣鬼は「人斬り斑平」――本当に「剣鬼」尽くしでいくようです。いやはや、テレ東には当分頭が上がりません。
しかし今回も斬られ役として豪快なエビ反り断末魔を見せてくれた福本先生、毎回ゲスト剣鬼に斬られるんじゃないだろうな…
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