「裏宗家四代目服部半蔵花録」第2巻/第3巻 激突、忍法vs剣技
第二巻・第三巻が同時発売ということで、私を含め一部で「もしかしてこれで完結…?」と懸念された「裏宗家四代目服部半蔵花録」。まったくもって嬉しいことにそれは杞憂、それよりも何よりも、物語の方もぐっと盛り上がり、実に面白い作品となってきました。
この第二巻・第三巻で描かれるのは、江戸の町で暮らす忍たちが、何者かによって次々と追い詰められていく様を描く「忍狩りの章」。
たとえ今は忍を捨て、平和に暮らしていたとしても、容赦なく――本人のみならず、その家族まで――惨殺していく謎の敵。奉行所までも手足の如く使う姿なき敵に、お花は挑むことになります。
戦闘力という点であればほとんど無敵に近いお花ですが、敵の正体が見えず、そして必ずしも自分を狙ってくるわけではないのでは、何とも動きがたい。
もちろん自分を狙ってくるわけでなければ、忍者らしく息を潜めていればよいわけですが――もちろんそんなことができるのであれば主人公ではない。住む土地を焼き出され、伊賀から江戸に出てきた三人の若者を救うために、お花は、仲間たちは自ら死地に赴くことになります。
(この辺り、単なるヒロイズムではなく、孤独な子供時代を送ってきたお花の心情と巧みに絡めたドラマ作りがうまい)
…が、それだけでも十分に盛り上がるドラマに更に一ひねり、というか混乱の種として登場するのが、謎の小鳥侍(違 柳生十兵衛。
もちろんあの柳生十兵衛三厳その人ではあるのですが、本作での十兵衛は極度の方向音痴の上に、異常なまでの好奇心の持ち主というすっとぼけた男。
元々息抜きのギャグ要素も少なくない本作ですが、それでも十兵衛のキャラは異色。登場しただけで、場の空気が変わるユニークな存在ですが――もちろんそれだけなわけがない。
柳生家嫡男として、彼もまた忍狩りに組みする者。そしてその剣技たるや…
実は本作における忍びの術は、描写だけ見るとほとんど「魔法使い」的なのですが、十兵衛が見せる剣の技は、それらと明確に一線を画するもの。決して超自然的ではない、しかしそれでいて超人的な技として十兵衛の剣は描かれており、異質の強さを持つ十兵衛とお花、十兵衛と忍たちの戦いが、間違いなく今回のクライマックスと言えます。
個人的には、忍がほとんど職業の一つとして――まるでRPGのクラスみたいに――普通に存在を認識されているのには、正直なところ違和感を些か感じるのですが、それは「こういう世界」と思うべきなのでしょう。
キャラクタードラマの盛り上げ、そしてアクション描写の巧みさ…いずれも第一巻のそれを超える成長を見せていると感じられる本作。掲載誌が隔月刊なこともあり、次の巻はまだ先のことになるかと思いますが、二冊溜めてからなどと言わず、早く次の巻を手にしたいものです。
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