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2008.11.13

「柳生大作戦」第三回 まずはじめに柳生ありき?

 今年度の舟橋聖一文学賞を受賞してしまった「柳生大戦争」に続く荒山先生の柳生もの「柳生大作戦」第三回が掲載された「KENZAN!」誌最新号が発売されました。
 前二回を読んだ時は比較的(荒山作品的に)おとなしめだと思っていた本作ですが、この第三回においてついに本性を現したな、という印象。もう、一体どうしたらいいのか…と読者が途方に暮れるテンションで、荒山節絶好調であります。(色々とネタバレしておりますのでご注意を)

 第三回前半は、前回に引き続き668年サイド。拉致された新羅王女と共に、神器の安置された塔に閉じこめられた謎の剣士“劉仁軌”の運命は…という前回のヒキから始まりますが、最初のうちこそ「やっぱり元ネタ的に、操られるとホイホイついて行っちゃう尻軽なんだな臘鷺守は」とか「冷静に考えたら七色光線を出すのは亀の方じゃなくて冷凍怪獣だろJK」とか呑気に構えていられたのですが…

 前回登場した八岐大蛇の卵が「八岐大蛇は新羅のご当地怪獣だったんだよ!」という狂った理由で孵化してからの展開を何と評すべきか。
 荒山ファン的には、八岐大蛇といえば、どこかで聞いたような歌と共に現れるワンゴン様というのが常識でしたが(最近文庫化された「柳生陰陽剣」(旧題「柳生雨月抄」)ね)、あに図らんや、金星の文明を三日で滅ぼしそうなやつだったとは…
 これには臘鷺守も大ハッスル、三つのしもべというよりは、ソーニックブーム(平田昭彦調)と共に飛び回る空の大怪獣チックに空中大激突であります。

 …誰が得するんでしょうこの展開。僕は大好きですが。
 こうなったら荒山先生には時代怪獣作家として、ぜひ藤原審爾先生の跡を継いでいただきたい(怒られそうだな、色々と)。


 さて、そんなこんなで668年サイドは終了。天正サイドに移りますが、こちらも怪獣こそ登場しないものの、忍法創世記ならぬ柳生創世記、「まずはじめに柳生ありき」とでも言わんばかりの荒山捏造史観で先生大ハッスル。
 あまり詳細に書くわけにはいかないので箇条書きにすると
・柳生流には一千年の歴史があったんだよ!
・上泉伊勢守は実は柳生石舟斎の○○だったんだよ!
・引用ばっかりしてますがそれが何か?
・山岡荘八vs山田風太郎をプロモート
・あまつびん じゃなくて てんしんびん(先生そんなに赤影が好きですか。僕は好きです)


 …読んでいる方もわからないと思いますが、書いている方もよくわかりません。
 ただ一言、感想を書くとすれば「柳生がそんなに好きかーっ!」というところでしょうか。柳生のためなら捏造も辞さないその創作態度、何が荒山先生をそうまで動かしているのか…いや何となくわかるようなわかりたくないような。

 今になってみると第一回の感想で「正直なところ、前作に比べると今のところネタ分は皆無に等しいですが」などと書いていたあの頃は如何に平和だったかと思いつつも、この先、果たして一体どのようなとんでもない波乱が待ち受けているのか、楽しみでなりません。

 ただ一つ言えるのは、舟橋聖一文学賞を取ろうと何を取ろうと、この先も荒山先生は荒山先生であり続けるのだろうな、ということ。
 真面目な作品ももちろん好きですが、やっぱりこういうのもなくちゃ! と思ってしまうのはタチの悪いファンゆえかもしれませんが、正直な気持ちでもあります。


「柳生大作戦」第三回(荒山徹 講談社「KENZAN!」vol.7掲載) Amazon
KENZAN! vol.7


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コメント

ども、こんばんは。
主水さんのこの記事読んだら、いてもたってもいられなくなって、週末まで待とうと思ってたKENZAN!を買って来ちゃいました。
いや~、ホントにスゴイですよね。
そうそう、荒山先生、船橋聖一文学賞受賞おめでとうございます。
彦根市内の高校に3年間通っていた身としては、ちょっと誇らしいような気もしますが、それが何か?(なんてね)

投稿: まさ影 | 2008.11.14 01:10

いやー本当にスゴイというほかに何が申せましょう…先生の場合、目的と手段が極めて近しいところにあるとしか思えません。

それにしても、「それが何か?」というフレーズの使い勝手は反則級ですね

投稿: 三田主水 | 2008.11.16 22:08

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