「箱館妖人無頼帖 ヒメガミ」第4巻 今、一つの頂点に…
誠に残念なことに掲載誌の休刊が目前ではありますが、作品のテンションは全く落ちることなく展開する「箱館妖人無頼帖ヒメガミ」の第四巻が発売されました。前巻より開始された、男たちを妖人に変える魔の黒後家楼を巡る戦いの完結編と言うべき今回、アクションまたアクションのつるべ打ちの中で、彪とヒメカを巡るドラマが展開していく、実に読み応えのある内容となっています。
箱館の町での妖人たちの異常な増加と機を同じくして現れた外国人娼館・黒後家楼。その謎に挑むべく潜入したヒメカ、そして箱館警察の倉田警部長がそこで見たものは…
と、今回のエピソードを彩る謎のほとんどは、前巻で解決しているため、この巻の大部分を占めるのは、襲いかかる妖人たちの群れとの一大バトル。それも、数多くの無力な娼妓たちを守りつつ、巨大な死の迷宮と化した娼館から脱出しなければならないという、いやがうえにも盛り上がるシチュエーションであります。
しかしこの巻の見所は、アクションだけではありません。激しい戦いの中で、彪とヒメカの二人を巡るドラマに、一つの大きな転機が訪れることとなるのです。
物語の冒頭より、未発達ぶり…じゃなかった未熟ぶりが目についてきた彪。この巻では、彪が――敵の陰謀によるものとはいえ――未熟の極みとも言うべき力と心の暴走を始め、ついにはヒメガミたちと対峙することに…
そしてその中で描かれるのは、これまで抑えられてきた孤独な少女の胸中。周囲から心を閉ざし、ただ一人妖人との戦いを続けてきた中で、唯一心を開きつつあったヒメカの正体を知り、いよいよ荒れ狂う彪に対して、ヒメカ=ヒメガミの選択は…
この辺りの展開は、あるいは当初の予定ではもう少しゆっくりと描かれる予定だったのかもしれませんが、しかしこの巻で、死闘の中で描かれる二人の少女の対立と和解は、激しい力と力のぶつかり合いの中で描かれるからこそ、その心と心の触れあいが、一層鮮烈に、感動的に響くもの。
そして全ての恩讐を乗り越えた果てに、ついに出現した巨大な敵に対し、全ての力を一つに集めて戦うラストバトルの盛り上がりは、ここまでに描かれてきたキャラクターたちのアクションとドラマが、絡み合いつつ共に一つの頂点に達したものであり、この作品を読んできて本当に良かった、と断言できます。
(そしてその直前に登場した彪の師匠には吃驚…特にネコ耳)
さて、本作も残すところはあと一巻。たかが一巻、されど一巻――その中で果たしてどのような物語が展開し、そしてどのような結末が描かれる(あるいは描かれない)のか。正直なところ、巻末の予告以上のことは現段階では全くわかりません(あるいは、新たなるヒメガミの誕生譚として終わる予感はありますが…)。
しかし、この作者が描くのであれば、きっと間違いはない――今はそう思いつつ、決着の時を心躍らせて待っている次第です。
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