「主水之助七番勝負 徳川風雲録外伝」 六番勝負
「主水之助七番勝負」も残すところあと二話。最終回直前ということで、物語の方も、一気に主水之助と善鬼との決着に向けて動き始めましたが、その前に登場する剣鬼は、ちょっとした…いやちょっとどころではない変化球であります。
今回主水之助と対決するのは、安中藩の同心・井川北斗ですが、しかし今回の真の剣鬼と言うべきは、「薬研籐四郎」。この薬研籐四郎、一見人名のように見えますが、さにあらず。名工・粟田口吉光が打ったという名刀の名前であります。
柴錬先生の剣鬼シリーズでは、「侠客閑心」に登場し、数々の人間の運命を狂わせた凶相の刀である薬研籐四郎を、このドラマでは持ってきたというわけで、なかなか面白いアレンジの仕方ではあるな、と感心いたします。
この薬研籐四郎は、応仁の乱を起こす一因となった畠山政長が、攻められて河内正覚寺城で自害する際に手にしていたという短刀。その際になかなか腹に刺さらず、投げ捨てたら薬研に突き刺さったとも、最初の刀ではなかなか腹に刺さらなかったため、薬研をも貫いたというこの刀で腹を切ったとも言われる、曰く因縁付きの刀であります。その後、織田信長、明智左馬助、豊臣秀頼の元に――すなわち、いずれも攻められて敗死した武将の手に――渡ったという短刀が、今回の物語の中心となります。
道場の腕は最強ながらも、真剣を持つと震えてしまい、町の破落戸からも舐められている井川。彼が、嫁入りを間近に控えた妹と町を歩いていた際、偶然に凶賊と出くわし、何も出来ぬまま己の眼前で妹は斬り殺されるという悲劇に出会い、復讐のために手にしたのが、刀屋にあったこの刀(短刀ではないですが…)。その魔性に突き動かされるように、仇を次々と斬る彼ですが、しかしその暴走は止まらず…というのが今回のあらすじです。
が、それだけで今回は終わらない。実はこの魔剣が刀屋に並んでいたのは、かつてこの刀を使っていた善鬼が、レギュラーである信太郎の父を斬った際に切っ先を折られ、腹立ち紛れに堀に投げ込んだものが、拾われたという因縁が語られます。
そして信太郎は、遂に判明した父の仇である善鬼に対し、盗み出した薬研籐四郎で立ち向かうのですが…というところで次回に続く。
正直なところ、原典では何もせぬまま周囲が自滅していった感がある薬研籐四郎が、今回のドラマでは、持つ者を狂わせる魔剣という、いかにもな剣として描かれていたのはちょっと残念(もっとも、それは一種の錯覚であると善鬼は語るのですが)ですし、善鬼の登場であっさり退場する羽目となった井川同心はお気の毒という印象。
しかし、実は善鬼が薬研籐四郎を所持しており、そしてこの物語の冒頭から、信太郎が父の仇の残したものとして手にしていた切っ先がこの刀のものだった(善鬼のトレードマークである頬の傷も、この時に折れた切っ先でつけられたもの)というのは、なかなかに面白い趣向だったかと思います。
追う者、追われる者の因縁が絡み合い、頂点に達したところでいよいよ最終回。最後の決闘に期待します。
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