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2009.01.07

「必殺仕事人2009」 一年半ぶり、帰ってきた仕事人!

 もう少し再会できるかな? と思っていたのですが、存外時間はかかって、約一年半ぶりの登場となった「必殺仕事人2007」…いや「必殺仕事人2009」が、いよいよTVシリーズとして復活。その前のスペシャル版が、4日に放送されました。
 登場するのは「2007」同様、小五郎(東山紀之)・涼次(松岡昌宏)・源太(大倉忠義)に加えて中村主水の面々。そこに小五郎の同門の浪人・伊左衛門(沢村一樹)や「2007」にも登場したくノ一の玉櫛(水川あさみ)が絡んで二時間近くの長丁場であります。

 さて今回のスペシャル、第一印象としては、完全に「2007」の延長ということもあって、良くも悪くも「2007」と同様の感触。しかし既にキャラクター設定は所与のものとなっているので、その分余裕のあるストーリー展開ではあったと思います。
 そのストーリー展開は、老人医療というか薬価問題+地上げネタで、キャスティング的に明らかに若い層をメインターゲットにしているのに、このネタはいかがなものかと思いましたし(今時地上げネタというのも…ねえ)、それなりに予防線(?)は張ってあるとはいえ、御府内で一つの町内丸々虐殺する悪人どもというのもどうなのかな、とは思いましたが、仕事人四人のそれぞれのドラマが並行して描かれていった末の頂点としての仕事シーンという、当たり前と言えば当たり前の展開が、至極真っ当に描かれていたこともあり、なかなか楽しむことができました。

 また、特に印象に残ったのは、今回のゲストキャラの一人・伊左衛門であります。
 剣術自慢で世直しを目指す浪人、仕事人をクズ呼ばわりして敵視する…というと一見明朗な剣士に思えますが、その実、自己顕示欲が強く、独善的な人物、という設定なのが面白い。単純な正義漢でもなく偽善者でもなく――後者寄りではあるのですが――人間臭い男が、巨大な悪意に触れるうちにその歪みを増幅させ、ついに悪の道に…というのは、最近の必殺ではちょっと珍しいキャラクターではないでしょうか。
 その伊左衛門を演じるのが、好青年からエロキャラ、変態まで幅広い芸域を持つ沢村一樹だったので、また善悪ともつかぬ味があって、なかなかよかったのであります。

 そしてちょっと意外な役回りというか何というかだったのは、涼次とは浅からぬ因縁で結ばれたツンデレくノ一・玉櫛。「2007」からの出演ということもあり、中盤は涼次とのコミカルなシーンもかなりあって、涼次ともども良いキャラクターだなあと思っていたところで大どんでん返し。まさか、悪人側に寝返った伊左衛門の最初の犠牲者にされてしまうとは…
 完全にレギュラーになるものだと思っていたので、ちょっと意外すぎる――まあこれはこれで必殺らしいと言えなくもないのですが――退場に唖然愕然。正直なところ、ちょっともったいなさすぎる扱いでは…とは思うのですが、この展開のおかげで、今回のあまりに安すぎる仕事料でも、涼次が仕事を引き受けることに大きな説得力が生まれたのは、痛し痒しといったところでしょうか。


 必殺シリーズも30周年、長いような短いような印象ですが、やはりそれだけの期間の積み重ねは途方もないもの。当然のことながら、厳しいファンも多いわけで、この「2009」も、スタート当初から相当厳しい目で見られているのではないかと思います。
 私も必殺ファンのはしくれではあり、本作…というより最近の必殺に思うところがないわけではありませんが、もともと加点法の見方が好きなこともあって、まあ過去は過去、今は今という気持ちでつき合っていこうかな、と思っている次第。
 その意味では、今回のスペシャルはきちんと楽しむことができたと思います。この「2009」の真価が問われるのは、これから始まるTVシリーズの内容如何かとは思いますが、まずは前向きに楽しむこととしたいと思っております。

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コメント

伊左衛門は最後の最後まで何者なのか視聴者にも良い意味で不明瞭でよかったですね。

個人的にもっとも感心したシーンは
依頼を受けた際、普段だらだらとした小五郎には珍しく「伊左衛門はどこへ消えやがった!?」と怒声を叩きつけたのがかっこよく、効果的だなあと感じました。

投稿: 伯爵 | 2009.01.07 08:51

だいたいパターンとして、信じていた正義に裏切られて無残に死ぬか、悪に転ずるかのどちらかだろうとは思っていましたが、結構振り幅をもって描かれていたキャラだったので面白かったですね。

小五郎は昼行灯というより、最近の「出世とか女とかどうでもいいし…」な若サラリーマン(人のことあんまり言えませんが)的なキャラに見えて興味深いです。

投稿: 三田主水 | 2009.01.08 00:46

あ。なるほど

言われてみて気づいたのですが、小五郎のキャラも現代風設定ですね。
どおりで妙な親近感を覚えるわけだ!(遅)
そう考えるとこの作品実によく練られた設定にも思えるのですが、古い世代のファンに小五郎があまり好まれていない(ように感じる)のはそういう部分が深層心理的に共感できないというのもあるかもしれないですね・・・て考えすぎか

投稿: 伯爵 | 2009.01.08 08:31

小五郎って、実は唯一行動原理がはっきりと描かれてないキャラなんですよね
で、少なくとも表の顔の方はどんな人間なんだろ、と考えてみると、あ、こういうことなのね、という…

その辺りがもう少し掘り下げられれば、また評価は変わってくるのかなと思います

投稿: 三田主水 | 2009.01.09 01:01

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