「必殺仕事人2009」第01話 ひねりにひねった変化球
少々遅れてしまいましたが、TVシリーズとして放映が開始された「必殺仕事人2009」初回の感想であります。
正直なところ、予告を見た段階では「ホストクラブネタぁ? また(微妙にずれた)時事ネタか…」と、がっかりして、ほとんど期待していなかったのですが――これが何と、一ひねりも二ひねりもある、実に面白いエピソードだったのです。
江戸の町で評判を集める(今の言葉で言えば)ホストクラブ・美景庵。江戸中の女性を熱狂させる美景庵の裏の顔は、客の女性を男たちに斡旋して儲けた上に、用済みと見るや惨殺するという非道なもの。そして美景庵の客だった娘を殺された男・仁吉が、仕事人に仕事を依頼して…
という話の骨格だけを見れば、実によくあるお話ではあるのですが、そこからの肉付けが実に良い具合に入り組んでいるのが楽しいのです。
まず、最初に仕事を依頼された段階では、仁吉の動機が世間体を気にしたゆえのものと知って、仕事を断ってしまうのが面白い。プロとしてそれはどうなのよ、という気がしないでもありませんが(冷静に考えればこれのおかげで仁吉がアレしたようなものですし)、単なる殺し屋でもなく正義の味方でもない本作の仕事人像が見えてきますし、この件がクライマックスに至って泣かせにつながってくるのがなかなかうまいのです。
そして犠牲者の妹・お絹が、犯人を捜すうちに、仕事の本来のターゲットである実行犯・信次と、それとは知らずに惹かれ合うようになるというのも、ユニークな展開。
これでお絹もその毒牙にかかって…だと、これはこれで予想の範囲内ではありますが、店からもトカゲの尻尾切りで命を狙われた信次が、自分を匿ってくれたお絹に促され、奉行所に自訴することになります。
しつこいようですが、これで自訴する途中で店の連中に殺されて…というのはよくあるパターンですが、何と今回のエピソードでは、信次は仕事人のターゲットから外れて、本当に自訴してしまうのだから驚かされます。
そして――ここで仕置きされるのは、美景庵の主や金主、用心棒たち。しかし、確かに彼らも仕置きされるべき悪人であることは間違いないけれども、仁吉の恨みが向かうべき相手は信次であるはず。とすると、本来仕置きされるべき者が、生き残って終わることとなります。
が…ここで物語展開を振り返ってみると、物語の展開・構成上、仁吉は信次のことを知らず、そして仕事人側も、信次の存在を感知していないのに気付きます。なるほど、仕事としては片手落ちのような気もしますが、お絹とのドラマを経て、信次にも改悛の兆しがあるし、これはこれで一つの皮肉なドラマとして、アリなのかも…と思ったところで最後のどんでん返し。
詳細はここでは触れませんが、冒頭で描かれた伏線がラストに来て生かされ、そして信次という男の真の姿がはっきりと浮き彫りにされていく様には、こういうドラマだったのか、とただただ驚嘆。
これまでに物語に生じた、視聴者が感じた微妙な齟齬が、ラストで一気に表に吹き出し、そして最後の最後の仕置きに繋がっていくというひねりにひねった展開に、大いに唸らされた次第です。
冒頭に書いたように、題材の陳腐さから内容に期待せず、どうせ今回もルーチンワークの「必殺」に違いない…と、(そういうのって好きになれないなと思っていたにもかかわらず)すっかりヒネたマニアになっていた自分を大いに反省するとともに、スペシャル二回を挟んでいたとはいえ、初回から変化球を投じてきたスタッフの業前には感心いたしました。
確かに、構成的にかなりギリギリというか、一歩間違えれば破綻しかねないストーリー・仕掛けではあったのですが(ついでにいえば、涼次と源太の仕置きシーンはもうちょっと無理があったような)、冒険大いに結構。これはもしかすると、今回は相当に面白いシリーズになるのでは…と感じた次第。素直に次回が楽しみになってきました。
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