「戦国妖狐」第2巻 日常を獲得するために
その題名の通り戦国時代に妖狐の姉・たまと仙道の弟・迅火の戦いの旅を描いた「戦国妖狐」の第二巻であります。
設定紹介的な側面も強かった前巻に比べると、テーマ的にも展開的にも、本筋に踏み込んできた感があります。
世直し旅の最中に、人間を改造して力を求める退魔の僧兵団・断怪衆に喧嘩を売った二人。その前に現れる断怪衆の刺客との対決が、今回のメインであります。
妖刀を操り闇(かたわら)の肉を喰らう凄腕の闇喰らい、断怪衆の人間兵器・霊力改造人間最強の四獣将――なかなか少年漫画チックなバトル展開ですが、それほど複雑ではない描線できっちりと魅力的なアクションを描いてみせるのはさすが、というべきでしょう。
特に面白かったのは、闇喰らいの雷堂斬蔵と迅火の一連の対決でしょう。
霊力では遙かに勝る迅火に対し一歩も引かず、人間としての純粋な技で圧倒する斬蔵のアクションと、その圧倒的な相手に対して迅火の取った戦法には、漫画ならではの豪快さがあって、バトルものとしてもしっかり楽しめました。
その一方でいささか残念に見えてしまったのは、ストーリー展開としてはかなり重たいものを描いているにも関わらず、作者の他の、現代を舞台とした作品に比べると、その「重さ」が、ダイレクトに伝わってこない印象があります。
それは、戦いと対比されるべき日常が、本作においてはあまり見えてこないためではないかと――そこには、舞台がそもそも読者にとっての日常からかけ離れた時代であることもあるのですが――感じられます。
しかし、登場人物の多くは、そもそも日常を持たない、あるいは捨ててきた人物――その中でも、人間を憎み、闇に憧れる迅火は、その最たるものでしょう。
この巻のラストで、新たな旅に出る迅火たち一行。人間とは何か、闇とは何かを探る旅は、同時に、彼らにとっての日常を獲得するための旅となるのではないか…そう思えます。
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