「必殺仕事人2009」第06話「夫殺し」
一週抜けてしまいましたが、相変わらず面白い「必殺仕事人2009」。今週は、定番のエセ宗教者ネタでしたが、料理次第でこのような味付けになるのか、と唸らされたエピソードです。
今回中心となるのは、困窮にあえぐ寺社役付き同心・伊勢崎と、その病身の妻・初枝、そしてその二人と知り合いになった小五郎。
初枝の病を治すためにエセ宗教者一味に荷担し、ついには殺人まで犯すこととなる伊勢崎と、夫の変容に心を痛める初枝、そして何とか伊勢崎の転落を止めようとするも、果たせない小五郎…
冒頭に書いたように決して珍しいエピソードではないのですが、伊勢崎夫婦のキャラクターが丁寧に描写されるため(特に伊勢崎が愛する妻のために罪を犯しながらも、その罪悪感から別の女に溺れるという、厭なリアリティに感心)、感情移入度は相当のもの。これは本シリーズの特徴である実力派ゲスト路線が大いに効果を挙げていると言えるでしょう。
そして小五郎の方も、彼らに相対することで、同心としての顔、仕事人としての顔、そして何より人間としての顔がクローズアップされ、普段茫洋として表に出てこない彼のキャラクターが浮き彫りになるという巧みな構成であります。
(そんな彼の姿を見ての他の仕事人の反応に、彼らそれぞれのキャラクターが見えるのもまたうまい)
そしてその三者のドラマが一気に収束していくクライマックスが実にいい。
金回りが良くなった一方で笑顔を失った夫の姿に、悪事に手を染めていることを察知した初枝。余命わずかな中で彼女が最後に願ったのは、生き地獄に落ちた夫を救い、そして共に死出の旅を行くこと――
恨みを晴らすのではなく(もちろんそれは結果的に他の犠牲者の恨みを晴らすのですが)、救済のための仕事の依頼、という変化球ぶりが実に本作らしいひねり。そしてそのための仕事料が、かつて小五郎が、伊勢崎の困窮を見かねて貸した一両というのが泣かせます。
そして仲間たちがエセ宗教者一味を仕留めた末、対峙する伊勢崎と小五郎(この時点で既に小五郎の目が少し潤んでいるのがまたいい)。
そして一刀の元に斬られながらも、実に晴れ晴れとした笑顔を浮かべて倒れる伊勢崎と、彼に向かって完全に泣き声で別れの言葉を告げる小五郎、同時刻に息を引き取る初枝…恥ずかしながら、このラストシーンには思わず涙が出ました。
定番の題材を用いながらも、それにひねりを加え、定番では終わらない本作ならではの味に仕上げる。それは脚本の妙ももちろんですが、それに応えるキャストとスタッフの熱意があってこそでしょう。
ジャニーズ頼りの企画、と見る向きも多いでしょうが、本シリーズは決してそれだけではないと私は心から信じていますし、それは六月までの放送延長の報にも表れているのだと思います。
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