「乱飛乱外」第6巻 以前よりも情けなく…?
「乱飛乱外」第六巻は、冒頭で海賊王女編が終了し、新たに始まるのは天使エズミ編。堺の町を舞台に、ド天然娘天使のように清らかな修道女と出会った雷蔵の運命は…という展開であります。
九鬼一族の姫・つなみの敵討ちを助けながらも、例によって弱気の虫のために自らチャンスを潰した雷蔵。新たな姫がいるという堺にやって来たものの、傷口に塩を塗られるような目にあってどん底状態にあった彼の前に現れたのは、町の教会で奉仕活動に励む美少女・エズミで――
と、もちろん彼女が今回の姫(?)となるのですが、わりかし早い段階で相思相愛となったものの、何せ彼女は神に仕える修道女。二人の間の越えられない壁を如何に越えるか? といったところ。
その一方で、久方ぶりに明智十兵衛光秀が登場、何故かくノ一衆と手を組んで、雷蔵とエズミをくっつけようとするのですが、さてただの好意でこの人物が動くわけもなし、こちらの動向も気になるところであります。
相変わらず、どの女性キャラもけしからん姿美しく魅力的に描かれている上に、ギャグやアクション描写も巧み――特に今回のエピソードでは、事あるごとにエズミを助ける不思議な力の描写が、不可思議かつ不気味で良いのです――と、水準以上のクオリティではあるのですが、しかし、少々不満なのは、むしろ以前よりも情けなくなっているような雷蔵のキャラクター。
確かに前向きなキャラクターではありませんが、これまでの戦いの中で見せてきた輝きは何だったのか、と思いたくもなるリセットぶりで、ある意味ハーレムものの主人公の典型とはいえ、正直なところ好感を持ちにくいキャラクターとなってきたかと思います。
今回のヒロイン・エズミが、非常に優しい(というより甘い?)キャラクターだけに、より一層雷蔵の情けなさが際だつというか…
(海賊王女編からそうでしたが、くノ一たちの印象もかなり薄いのがこれまた残念)
もちろん、雷蔵の本領発揮はこれから、というのもまた事実。これまでのエピソード同様、強く生きる姿勢の陰に隠れた弱さ・悩みを持ったヒロインたちの心を、雷蔵の、くノ一たちの活躍が救うことになるのでしょう。
エズミは、言ってみれば人の魂の救済を生業とする少女。その彼女が如何に悩み、そしてそれを如何に雷蔵が救うことになるのか――この巻では明確に描かれなかった彼女の「正体」も気になることですし、雷蔵の復活を信じて、もう少し見守ることとしましょう。
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