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2009.03.04

「大正探偵怪奇譚 鬼子」 鬼と人の間に

 時は平安、酒呑童子の遺児・夜叉丸と地獄丸は、彼らの母・茨木と共に隠れ棲んでいた。そんな彼らの前に現れた凄腕の男・鴉法眼に敗れ、深手を負った夜叉丸は、椿という美しい娘に助けられる。身よりのない子供たちと暮らす椿と共に過ごすうちに、夜叉丸の心にも変化が生じるが…

 「大正探偵怪奇譚」の第二弾は、大正と謳いつつもなんと舞台は遠く遡って平安時代を舞台として描かれる物語。。
 原作舞台ではシリーズ二作目ながら「第壱夜」と冠しての上演だったとのことですが、言うなればエピソードゼロ、大正の世では怪奇探偵として暮らす丑三進ノ助とその宿敵・紅蜘蛛戒の過去の姿を描くビフォアストーリーですが、これが想像以上に楽しめました。

 荒ぶる人食い鬼であった夜叉丸が、思わぬ傷を負って美少女・椿に助けられ、身よりのないもの同士肩を寄せ合って生きる椿たちと共に過ごすうちに、人間という存在と触れあい、いつしか鬼としての心を忘れていくも…
 という本作の物語構造はかなりシンプルであり、また、人としての心を持たない者が、人の純粋な心と触れ合ううちに、人の心を理解していくという趣向も、しばしば見かけるものではあります。

 が、本作の場合は、そのシンプルさ、ストレートさが、少しずつ、しかし着実に変化していく夜叉丸の心を浮き彫りにする効果を挙げていると感じられるのです。

 そして…それと同時に物語られるのは、人と鬼との間にいかなる違いがあるのか、というテーマ。
 弱肉強食を体現するが如く、人間を襲い、喰らうことを当然と考える(かつての)夜叉丸と地獄丸。彼らの姿は、まさに「鬼」そのものではあるのですが、しかし同時に、彼らの心には、母や兄弟を大切に想い慈しむ心――すなわち、愛があるのです。

 自分より弱きものを喰らうのは、人もまた同じ。それでは他者を愛する鬼と、人との間にいかなる差異があるのか…本作のそんな問いかけは、その愛ゆえに引き起こされたクライマックスの悲劇で、頂点に達します。


 そして再び時間軸は戻り、大正の世で人として暮らす進ノ助の前に現れた者たち。
 新たなる因縁の始まりを予感させて物語は一旦の結末を迎えますが――

 さて、第三弾も小説化されるのか、それはまだわかりませんが、その時を心待ちにしているところです。


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