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2009.04.04

「カミヨミ」第10巻 新章突入に高まる期待

 明治伝奇ミステリホラーアクション「カミヨミ」も単行本二桁の大台に乗り、第十巻が発売されました。前の巻で衝撃的な急展開を迎えた「女郎蜘蛛」編が完結し、新たなエピソード「将門の首」編に突入、いよいよ物語は佳境に入った感があります。

 東北の隠れ里で人々を支配してきた奇怪な絲神との死闘もほぼ決着に向い、これでこのエピソードも完結…と思ったところに発生した大事件。戦いの中で天馬の体に封印されていた日輪草薙が暴走、それと呼応して絲神の背後にあった真の敵・月輪草薙が、封印の軛を逃れて復活、しかしその姿は――

 「カミヨミ」の最初のエピソードで封印されたもう一本の神剣・月輪草薙のその後については、続く「天狗の神隠し」編で少しだけ触れられましたが、そこでの厭な予感が見事的中し、ここに二つの神剣の、神話めいた地獄絵図が描き出されることになります。

 正直に言って、ここでの月輪の剣の登場はあまりに唐突な印象があり、このまま物語が一気に完結してしまうのでは、とヒヤヒヤしましたが、今回はあくまでも緒戦という扱いで一安心。
 最後の最後に月輪の剣に持っていかれた感のある「女郎蜘蛛」編も、これまでの本作のエピソード同様、一ひねりを加えて実に余韻のある結末を迎え、やはり本作は実によく考えられた作品、という印象を再び受けました。
(よく考えられた、と言えば、月輪の剣に対する帝月の禁断の技の中身というのが、またえぐい上にこのエピソードの内容に即したもので、うならされた次第)

 そして始まるのは、あの平将門公にまつわる物語。天馬が修行のために鞍馬山に籠もり、力を使い果たした帝月が昏睡を続ける中、将門公ゆかりの地で次々と起きる殺人事件の背後に、この世にあってはならない存在の陰を感じ取った零武隊は捜査を開始するのですが…

 実のところこの第十巻のほとんどで、この新エピソードが展開されているのですが、まだまだプロローグ――あるいは「女郎蜘蛛」編を受けてのリスタート――といった印象で、まだまだ全貌が見えないのが正直なところ。
 今までのパターンだと、これはこの人物が怪しいよな…というのはありますが、さてその予想が当たりますかどうか。

 月輪の剣という、全編を貫くであろう強大な敵が現れましたが、しかし将門公はそれにも負けない存在感であるのは間違いのないところ。この先の展開が楽しみ…ってラスト一ページでまたとんでもない話が!?


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