「必殺仕事人2009」 第13話「給付金VS新仕事人」
おそらくは前回から延長分に突入した「必殺仕事人2009」ですが、いよいよ今回から新仕事人・仕立て屋の匳の登場であります。
正直に言って、時事ネタ、それも新仕事人登場のイベント回ということであまり期待していなかったのですが、なかなかどうして面白いエピソードとなっていました。
前回ラストで小五郎の獲物をかっ浚った匳。その彼の匳の弟分をはじめとする人々が巻き込まれた陰謀と悲劇が今回描かれるのですが、その中心となるのがなんと定額給付金。
あまりにもあまりにもの時事ネタに初めは愕然としましたが、しかしこれが人別の帳外れ(逃散などにより人別帳から外された者)と組み合わされたことで、コロンブスの卵的面白さが生まれていたのには驚かされました。
それというのも今回の悪人の陰謀というのが、帳外れの人々に人別を与えると持ちかけ、別人として生活させ、その分の給付金を着服するというもの。
現実の方でも、制度の不備で本来必要としている人間の手に給付金が渡らなかったり、受給詐欺の可能性が指摘されているところ、これは妙な説得力がありました。
そして何よりも、時代もので色々と難しい部分がありそうな人別ネタを、このような形で持ち出してきたのにはただ感心。まさに今この時しかできないネタあしらいであります。
そしてまたうまいのは、そこに匳自身の物語を絡めてきたことでしょう。
帳外れの人々の庇護者として振る舞う彼であっても、彼らを一気に、全て救うことはできない。つっぱっていても一人では何もできない――そんな彼の無力さが、小五郎たちの手を借りての仕事に繋がっていく展開はうなずけます。
またいささか意地悪に見れば、彼も帳外れの人々に必要とされることに、自分の価値を見出していたと解せる部分もあり、その意味で、からくり屋とは別の意味の若さ・弱さが見て取れるのです。
しかし、からくり屋の轍を踏まないようにということか――ここで匳の前に主水が出てくるのがうまい。仕事料を取らずに仇を仕留めた匳に対する主水の言葉は、神様(人々を未然に救うヒーロー)にも、悪魔(自分のために他人を殺す者)にもなれない、仕事として人を殺す仕事人の、中途半端で、しかしどこまでも人間的な存在感を語るものと受け止めました。
まあ、肝心の匳の仕事ぶりは、技の序破急の区切りがはっきりしなくて今一つノれなかったのですが、これは初陣ということで良しとしましょう(むしろあの技で、前回ラストにどうやって本田博太郎を殺せたのか…)。
何はともあれ、匳の存在はまだまだ台風の目になりそうで、後半戦も楽しむことができそうです。
ちなみに今回、主水のめざし一本で、小五郎の複雑な心境(というか彼の動揺ぶり)を表現していたのは、地味にうまい、と感心した次第。
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コメント
給付金のからくりはアイデアが練られてて良かったですね。
さらにエンディングのコメディで5話の商い税も絡めてきたのもエピソードが単発ではなく連続性を感じさせるもので感心しました。
しかし本田博太郎は、無理だろうに・・・ねえ・・・脚ひっかけたあたりで小五郎追いついて(ry
加えて、あれほどの腕利きでいわくありげな人物のバックボーンが結局なんにも用意されてなかったのもちょっと残念でした。
投稿: 伯爵 | 2009.04.26 23:31
今回の悪人は、ぶっちゃけ現実にも出てきそうな…あ、商い税は聞いた事あると思ったらそうでしたね
本田博太郎はなあ…首の高さに糸張って待ってたんでしょうか。
しかし晋松が泣くぜ…直次郎よぅ
投稿: 三田主水 | 2009.04.27 23:14