「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第3巻 義の子・与六が行く
若き日の直江兼続の意外伝「義風堂々!! 直江兼続」も早いものでもう三巻目。第二巻で明かされた衝撃の出生の秘密をいかに兼続(樋口与六)が受け止めるかが描かれます。
自身が上杉謙信の子であると知った与六。謙信という絶対神の名の下にまとまった越後にとって、自らの存在がその神を貶めかねぬものと知った与六は、死を覚悟しつつも、己の出生を知る者を訪ねることになります。
育ての父・樋口惣右衛門、仙桃院、謙信、直江景綱、そして上杉景勝…関係者全員のところを回ったため、出生ネタでこの巻丸々引っ張った印象がありますが、それだけの大きなエピソードということでしょう。
(結局みんな知ってるじゃん! とつっこみたくはなりますが…)
さて、その中で面白いのは、与六が出会う一人一人が、それぞれ「らしい」形で与六と向き合い、彼の「生」を肯定していくことであります。
戦国生え抜きの武将らしい豪快さと人間くささを見せる謙信と景綱、例によって仏頂面の中に熱い絆を感じさせる景勝…
しかしその中で最も印象的だったのは、仙桃院のそれでした。
上杉家の恥部とも暗部ともなりかねぬ自分を、赤子のうちに殺せば良かったものをと自嘲気味に語る与六に対して彼女が語ったのは、越後のため、人間として自分の子をその手で抱くことの出来ぬ謙信の苦しみと哀しみ。
そんな弟の子供の命を生かすことこそが、自分にとっての「義」であり――すなわち与六こそは「義の子」なのだと、彼女は語ります。
「不義の子」という言葉はありますし、ある意味与六の存在はそれに当たるのかもしれません。
しかしそれに対して、与六を「義の子」という正反対の言葉で受け容れ、肯定してみせる…何とも心憎い描写ではありませんか。
さて、その一方でこの巻では、今後与六と景勝の前に立ちふさがることになる上杉景虎が登場するのですが、これがもう本当に大変なことに…
だって血の涙にドオオーンですよ!? これは期待せざるを得ない。
(いや、本当に大変なのはそこではないのですが…いやはや斬新すぎる景虎像です)
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