「風が如く」第3巻 目指すべき物、立ち塞がる者
ファンキーな石川五右衛門の奇想天外冒険譚「風が如く」も早くも第三巻ですが、ここに来て急展開。こういう話だったのか! と、こちらの予想や固定観念を超える物語に驚かされるばかりです。
勝手気儘に旅する五右衛門一派の前に突如現れたのは、あの織田信長。
五右衛門からかぐやを奪い、各地から強奪した五つの宝物と共に、謎の儀式を行わんとする信長が、明確に五右衛門の敵として立ちふさがることになります。
正直なところ、この辺りはかなり駆け足の展開で、雑誌掲載時には、このままロケットでつきぬけてしまうのでは…と大いに心配しましたし、「序章完」の文字には心臓が止まりそうになりましたが、なんのなんのまだまだ冒険は続きます。
作者曰く「三巻目にしてやっとこ舞台が整います!」という言葉通りに、ここで提示されたのは、五右衛門の目指すべき物と、立ち塞がる者。
五右衛門の目指すべき物、それは夜空にかかるあの月と、そこに向かうための鍵となる宝物…仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、竜の首の珠、燕の子安貝――すなわち、「竹取物語」の五つの宝物!
そして五右衛門の前に立ち塞がる者、五右衛門一派と宝物の争奪戦を演じることになる相手は、羽柴秀吉、明智光秀、前田利家、滝川一益、柴田勝家の五人の将…
なるほど、確かに物語の理が明確になったわい…と感心したのもつかの間、この第三巻の巻末で開始された最初の戦いは、導入部だけで、そんな理を一気に吹き飛ばすような衝撃的な展開です。
何しろ、五つの宝物の一つ、仏の御石の鉢が現れた先というのが、鬼たちが住む鬼ヶ島。そしてそこに向かった柴田勝家の正体もまた…(あの異名をこう使うか! とニンマリ)
いやはや、かぐやに金太郎(の子孫)が登場した時点で、どうなってもおかしくないと気付くべきでしたが、まさかここで桃太郎の世界に繋がっていくとは。ただただその奇想には頭が下がります。
もちろん、ここまで来ると現実との歴史の関係で色々と矛盾が生じてくるのですが、しかしその辺りもこの巻ではぬけぬけと、しかし実にエキサイティングな回答を用意しているのも心憎いところ。
奇想天外な冒険の末に、五右衛門が月面から「絶景かな!」と地球を見下ろす日を、今から心待ちにしているところです。
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