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2009.09.21

「猫絵十兵衛 御伽草紙」第2巻 健在、江戸のちょっと不思議でイイ話

 いま私が一押しの時代漫画の一つ、「猫絵十兵衛 御伽草紙」の、待ちに待った第二巻が発売されました。
 鼠除けの猫絵師・十兵衛と、その相棒で元猫仙人のニタが出会う江戸のちょっと不思議でイイ話は、今回も健在です。

 今日も飄々と江戸の町を行く十兵衛とニタが出会うのは、人間と猫の交流が生む様々な人間模様…いや人猫模様。
 この巻に収録された六つのエピソードは、 淡い恋模様あり、江戸の職人の心意気あり、ちょっと怖い怪談あり、けなげな子供たちの姿あり――実にバラエティに富んでいますが、共通するのは、どれも猫が絡んでいることであります。

 もちろん、掲載誌が猫漫画専門誌(あるのですよそんな素敵な雑誌が)だけに、それは当たり前といえばその通りですが、しかしそこに描かれる猫の存在が物語の中で必然性を持って、そして時代劇という特殊な舞台上で違和感なく描かれているのが、本作の魅力であり、私が本作を愛する由縁です。

 この第二巻に収められたどのエピソードも、そんな魅力あふれる作品ですが、個人的に特に気に入っているのは「観月猫」と「縹色の猫」の二篇です。

 前者は、彫り師修行中の少女が彫った欄間の猫が、月夜に抜け出して宙を舞うという、一ひねりした職人譚+幻想譚。
 騒動を収める十兵衛の計らいが何とも粋で良いのですが、「猫が飛んでるぞ」「たまにゃあ猫も空ぐれぇ飛ぶさね」という十兵衛とニタのやりとりが、ある意味本作を象徴するようでイイのです。

 そして後者は、老僧と縹色の瞳の猫の愛情溢れる交流から、十兵衛とニタ(と猫嫌いの浪人・西浦さん)を巻き込んだ一大血戦にまで展開していく、五十ページにも及ぶ大作。
 老僧を守るため、あえて猫又の本性を明かし妖に挑む縹(ちょっとツンデレ気味)と、その心意気に応え助っ人として立ち上がる十兵衛とニタの姿が――本作で出会えるとはちょっと意外なほど――男泣き度が高く、たまりません。


 愛すべきキャラクターたちに、どこか懐かしくも新鮮な物語、それを包む江戸の風物…そしてもちろん、魅力的な猫たち。
 私の大好きな作品です。

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