「戦国妖狐」第3巻 現実の痛みを踏み越えて
戦国時代をさすらう妖狐と仙道の姿を描く「戦国妖狐」の第三巻であります。 前の巻から本格化した僧兵団・断怪衆との死闘はいよいよ激化、四獣将との戦いの果ての、ある悲劇が描かれることになります。
霊力改造人間を作りだし、退魔を行う断怪衆に喧嘩を売った人間嫌いの仙道・迅火と、妖孤のたま。彼らと行動を共にすることとなった自称武芸者の真介、そして霊力改造人間の少女・灼岩…
灼岩の中に存在する闇・火岩の故郷を目指す四人の旅の前に次々と現れるのは、断怪衆最強の四獣将が烈深と道錬。旅の仲間たちとの触れ合い、そして四獣将との戦いの中で、頑なだった迅火の心にも変化が生じていくのですが――
と書けば、いかにもなバトルものにも見えますが(事実、クライマックスの迅火vs四獣将・道錬との壮絶な打撃戦など、バトルものとして見てもなかなか面白いのですが)、しかし本作もやはり水上漫画。
キャッチーで(時として痛くも見える)ファンタジー入った設定の中で、不意に訪れる現実の痛みを描くのに光るものを持つ作者の技は、本作でも健在であります。
未読の方のために深くは触れませんが、本書の後半に収録されたエピソードで描かれる別れと出会いは、まさかここでこのような展開になるとは…と、胸を突かれること間違いなし。
「ようこそ世界へ」の台詞は、ちょっとズル過ぎるくらい決まった感がありますが、それ以上に、あの迅火が熱い涙を流す様に、心を揺さぶられます。
正直なところ、まだまだ作者が戦国という「現実」を扱いかねている感は強く、その点は残念ではあるのですが、現実の中で痛みを知った迅火が、真介たちがこの先どのような旅路を歩むのか、これは間違いなく、見逃せないところであります。
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