「大江戸!! あんプラグド」第1巻 意外にしっかり押さえてます
現代のロック少女・紅林アキは、大遊寺でのゲリラライブの直前、雷に打たれてしまう。意識を取り戻した彼女がいたのは、天保五年の江戸――寺に伝わる伝説の天女に祭り上げられたアキは、茶屋の怪力娘・おなつ、吉原の人気花魁・初音、天才少女・ふゆの三人と共に千人の人々を救う使命を課せられて!?
最近は携帯コミックというメディアもすっかり定着してきた感がありますが、本作「大江戸あんプラグド」はその中でもユニークな作品。
天保の世にタイムスリップしてしまった現代の女子高生が、天女として大活躍するというお話であります。
強引に天女に祭り上げられてしまったものの、主人公・アキは特殊な能力があるわけでもなく、ロックを愛するごくごく普通の女の子。
それでも、天女が千人の人々を救って天に帰ったという伝説に一縷の望みを託し、それぞれ生まれも育ちも異なる三人の少女とチームを組み、人助けに奔走する、というのが本作の基本設定です。
女子高生といえば、何故かタイムリープに巻き込まれる率が極めて高いことで知られるわけで、その意味では本作の趣向というのは、さして珍しいものではないかもしれません。
しかしそんなタイムリープもの数ある中で本作が輝いているのは、江戸時代、天保の世の社会風俗というものを、本作が意外にしっかりと押さえていることにほかなりません。
たとえば、以下のように――
・吉原に咲く桜は、根付いているのではなくその季節に木ごと切って持ってきている
・江戸時代の女性は脇毛を剃らない
・月代を剃っていない男は、一部例外を除けば犯罪者扱い
トリビアルなネタの部分もありますが、例えば上に挙げた三つ目の例のように、いかにも女子高生らしい視点から「時代劇」の常識をひっくり返しつつ、同時に物語の展開にも絡めてくるものもあり、作品の軽いノリに油断していたところに嬉しい裏切りであります。
考えてみれば、女子高生というのは最も感受性が強い時期であり、それだけにものの本質にも敏感に反応する存在。
そう考えると、キャラクターの、ひいては読者の知識・常識と、その世界で出会う事物とのギャップの大きさからくる衝撃が物語の柱の一つともなるタイムリープものに、彼女たちが主人公として選ばれるのも頷けます。
しかしそのギャップも、出会う世界の事物がしっかりと描かれてこそ。その点で本作は評価できます。
一話完結スタイルのため、個々のエピソードがあっさりと解決するものばかりで食い足りなさは大いにあるのですが、そこは媒体ゆえのものもあるのでしょうか。
その点をマイナスしても、やはり気になる作品ではあります。
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